269 / 319
信念の比重
しおりを挟む
「分かりました」
長い沈黙の後、海原くんが天を仰いで答える。
「たぶん、どっちが正しいとかそういう問題でもないんですね。許すとか許さないってことと、これからどうやって食料を調達するか、を考えるのは全く別のこと。もしかしたら、皆さんはそういうことを僕に教えようとしてくれたんじゃないですか?」
海原君がそこまで熟慮しているなんて、正直びっくりした。しかし、僕の思いはちゃんと伝わっている。そう思うとなんだか嬉しくなった。
「おそらく」
釣りキチさんが静かに口を開いた。
「海原君が最初に言ったことはきっと正しいんだと思う。サバイバルってところからは、どう生き延びるかっていうのが最大の目的になるからね。僕らみたいに呑気に構えていたら生きていけない、確かにそうなんだよね」
釣りキチさんのこれだけ真剣な想いの吐露は初めて聞いた気がする。他のメンバーも黙って釣りキチさんの話に耳を傾けている。
「でもね。僕はやっぱり自分に素直でいたい。正しいとか間違いだとかじゃなくて、自分が本当にやりたいことは何なのかってそれだけ考えていたいんだ。甘ちゃんだと言われてもしょうがない。でも自分に嘘ついてまで生きようとは思わない」
だんだん熱を帯びる釣りキチさんの言葉に僕は震えた。そこまで信念を抱いていたのか!
「そうね」
釣りキチさんの話が一息ついた時を見計って、理科さんが話し始める。
「釣りキチさんの言いたいことはよく分かるわ。あたしもそうだもん。自分の信念は曲げたくないな」
「理科さんはどんな信念があるというの?」
陽子さんが興味深そうに尋ねる。
「そうね。あたしはやっぱり真理の探求かな。今、起こってる現象の解明。そこをやっていきたいって思ってる。もちろん生き続けること前提だけど。そういう意味では犯人探し、広い意味では一体何があったのか、っていうことを調べるのはすごく興味があるんだけどね」
理科さんの返答を神妙に頷きながら聞いていた陽子さんは、上目遣いで天井を仰いだ。
「理科さんほどじゃないけど、あたしもやっぱり犯人が誰かってことより、起こった不思議な現象のほうに関心があるかな。これは理系のサガみたいなものかもしれないわね」
「二人ともすごいですね。僕なんてとてもそんな風には考えられないな。誰がこんなことをしたんだ!って、ちょっと腹立ってる感じ」
和也が尊敬の眼差しで二人を見る。
「まあ、いずれにしろ、今の状況でお互いに責め合っていても何も始まらないだろうよ」
林さんがため息をつきながらつぶやく。
長い沈黙の後、海原くんが天を仰いで答える。
「たぶん、どっちが正しいとかそういう問題でもないんですね。許すとか許さないってことと、これからどうやって食料を調達するか、を考えるのは全く別のこと。もしかしたら、皆さんはそういうことを僕に教えようとしてくれたんじゃないですか?」
海原君がそこまで熟慮しているなんて、正直びっくりした。しかし、僕の思いはちゃんと伝わっている。そう思うとなんだか嬉しくなった。
「おそらく」
釣りキチさんが静かに口を開いた。
「海原君が最初に言ったことはきっと正しいんだと思う。サバイバルってところからは、どう生き延びるかっていうのが最大の目的になるからね。僕らみたいに呑気に構えていたら生きていけない、確かにそうなんだよね」
釣りキチさんのこれだけ真剣な想いの吐露は初めて聞いた気がする。他のメンバーも黙って釣りキチさんの話に耳を傾けている。
「でもね。僕はやっぱり自分に素直でいたい。正しいとか間違いだとかじゃなくて、自分が本当にやりたいことは何なのかってそれだけ考えていたいんだ。甘ちゃんだと言われてもしょうがない。でも自分に嘘ついてまで生きようとは思わない」
だんだん熱を帯びる釣りキチさんの言葉に僕は震えた。そこまで信念を抱いていたのか!
「そうね」
釣りキチさんの話が一息ついた時を見計って、理科さんが話し始める。
「釣りキチさんの言いたいことはよく分かるわ。あたしもそうだもん。自分の信念は曲げたくないな」
「理科さんはどんな信念があるというの?」
陽子さんが興味深そうに尋ねる。
「そうね。あたしはやっぱり真理の探求かな。今、起こってる現象の解明。そこをやっていきたいって思ってる。もちろん生き続けること前提だけど。そういう意味では犯人探し、広い意味では一体何があったのか、っていうことを調べるのはすごく興味があるんだけどね」
理科さんの返答を神妙に頷きながら聞いていた陽子さんは、上目遣いで天井を仰いだ。
「理科さんほどじゃないけど、あたしもやっぱり犯人が誰かってことより、起こった不思議な現象のほうに関心があるかな。これは理系のサガみたいなものかもしれないわね」
「二人ともすごいですね。僕なんてとてもそんな風には考えられないな。誰がこんなことをしたんだ!って、ちょっと腹立ってる感じ」
和也が尊敬の眼差しで二人を見る。
「まあ、いずれにしろ、今の状況でお互いに責め合っていても何も始まらないだろうよ」
林さんがため息をつきながらつぶやく。
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる