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「こうやってみると、健太は小学生の頃から全然変わってないな」
「それはもしかして馬鹿にしてる? 僕が子供っぽいってことだよな?」
僕はちょっとムッとした。思わず表情に出てしまったのは、旧友の気やすさのなすところか。
「まあ、そんな顔するなよ。ちょっとからかっただけさ。むしろ、さっきのミーティングの様子見てたら、意外にしっかりしてて感心しまくりだよ」
「それはありがとう」
「ははは。それにしてもまさかこんなことになるとはな」
「ああ、お互いにな。僕は平凡なごく普通の大学生をやってたんだけどね。今ではもう思い出せないくらいだ」
率直に感想を述べると、和也は驚いてのけぞった。
「ええっ? まだそんなに経ってないんだろ?
俺は今日のことだから当然鮮明な記憶なんだけど、長くいるとみんなそんな感じになるのかな?」
そうだった。和也にとってはまだ今日の話。一日すら経ってないのだ。あまりに順応が早いためについつい錯覚してしまう。それから和也はいつのまにか「俺」になっていて、友達言葉になっている。
「なにせ、この短期間でも色々あったからな。前の世界ではとても考えられなかった」
「前の世界か……本当に俺たち、違う世界に来てしまったんだな。まだあんまり実感湧かないけど」
「もしかしたらまた戻れるかもしれないけどな」
和也の顔に光明がさしたように明るくなった。
「お前、何か知ってるのか! 戻れる方法を」
両肩を揺すって迫る和也をいなしながら、僕は首を振る。
「いや、全然。手掛かりはまったくない。そもそもここがいつのどこかさえも何もわからない状態なんだ。現代日本に戻れるかどうか以前の問題だ」
「なんだ……」
和也は落胆の色を隠さない。
「でも、何かのきっかけで急に戻る可能性がないわけじゃない。それが自分の意志ではないとしても。実際、僕らの意志関係なしに、あちこちで更なる転移が起こっているんだから」
「ああ、お前も優子ちゃんも別の集落から転移してきたんだってな」
その話は聞いて覚えていたらしい。
「消えた人たちの中には現代日本に戻った人もいるかもしれない」
「なるほど。でもそれは確かめようがないよな?」
「ああ。それにどうやら日本ではあの後、大災厄が待ち受けているらしい」
「大災厄?」
「地震や津波、火山の噴火みたいな自然の大災害さ。しかも、今まで経験したことがないような大規模な災害が立て続けに起こり、最終的に日本は壊滅してしまうんだってさ」
「なんだ? 誰がそんなこと言ってるんだ?」
「それはもしかして馬鹿にしてる? 僕が子供っぽいってことだよな?」
僕はちょっとムッとした。思わず表情に出てしまったのは、旧友の気やすさのなすところか。
「まあ、そんな顔するなよ。ちょっとからかっただけさ。むしろ、さっきのミーティングの様子見てたら、意外にしっかりしてて感心しまくりだよ」
「それはありがとう」
「ははは。それにしてもまさかこんなことになるとはな」
「ああ、お互いにな。僕は平凡なごく普通の大学生をやってたんだけどね。今ではもう思い出せないくらいだ」
率直に感想を述べると、和也は驚いてのけぞった。
「ええっ? まだそんなに経ってないんだろ?
俺は今日のことだから当然鮮明な記憶なんだけど、長くいるとみんなそんな感じになるのかな?」
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「前の世界か……本当に俺たち、違う世界に来てしまったんだな。まだあんまり実感湧かないけど」
「もしかしたらまた戻れるかもしれないけどな」
和也の顔に光明がさしたように明るくなった。
「お前、何か知ってるのか! 戻れる方法を」
両肩を揺すって迫る和也をいなしながら、僕は首を振る。
「いや、全然。手掛かりはまったくない。そもそもここがいつのどこかさえも何もわからない状態なんだ。現代日本に戻れるかどうか以前の問題だ」
「なんだ……」
和也は落胆の色を隠さない。
「でも、何かのきっかけで急に戻る可能性がないわけじゃない。それが自分の意志ではないとしても。実際、僕らの意志関係なしに、あちこちで更なる転移が起こっているんだから」
「ああ、お前も優子ちゃんも別の集落から転移してきたんだってな」
その話は聞いて覚えていたらしい。
「消えた人たちの中には現代日本に戻った人もいるかもしれない」
「なるほど。でもそれは確かめようがないよな?」
「ああ。それにどうやら日本ではあの後、大災厄が待ち受けているらしい」
「大災厄?」
「地震や津波、火山の噴火みたいな自然の大災害さ。しかも、今まで経験したことがないような大規模な災害が立て続けに起こり、最終的に日本は壊滅してしまうんだってさ」
「なんだ? 誰がそんなこと言ってるんだ?」
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