異世界転移物語

月夜

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意外な事実

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「僕が運んでいたのはカップラーメンとカップうどんだったのですが、近くの商品棚は缶詰の棚だったので大量に魚やフルーツの缶詰が一緒に来ました。あと僕が手を触れた他の人のカートなんですが……」

 そこまで話して、栗本君は少し首を捻った。

「二人用のテントセット、フライパン、鍋、懐中電灯、それから……ええと」

「モバイルバッテリーやライター、歯ブラシ、石鹸、シャンプー、ペーパータオル、トイレットペーパー、バスタオル、サランラップ、それからアルミホイルも」

 助け舟を出した料子さんの口から、生活用品の名前がスラスラ出てくるのには感心した。よく覚えたものだ。

「一気に生活必需品が増えたわけだな」

 林さんが感想らしきものを呟いた。

「カートに山盛りになってたみたいですね。倒れる前に見た記憶はなかったんですが」

 栗本君はそう注釈を入れつつ、先を続けた。

「そんなわけで、僕は今日の昼、こちらに来たのですが、金田さんから話を聞いても正直まだ信じられない気持ちです。あまりにも非科学的過ぎます」

 理系の高度な知識を持つ彼にとっては、余計に受け入れ難い事実なのだろう。

「ですが、これが現実なのも疑いの余地はないと思います。もし夢ならこんなにはっきり意識があるとは思えませんし。そうなると逆に、ここがどこなのか? そして今がいつなのか? ということに興味が出てきました。そのあたりの謎をこれから探っていきたいですね」

「栗本さんの専門というか、研究は何をやってらっしゃったんですか?」

 安食さんが尋ねる。

「僕は機械工学が専門です。主に工作機械における機械材料の研究をしてました」

「機械材料って、鉄とかプラスチックとか?」

「ええ。それ以外にも多種多様な合金類を扱っていますね。現在は環境に優しい素材でかつ強度があり長く使用できる素材が求められていて、そういった研究を繰り返してますね」

 僕にはさっぱり分からない分野だったが、話を聞いているうちに一つ思い出したことがあった。

「そう言えば、この世界では鉄がなくて、家にも釘が一切使用されてなかったんですが、それについてはどう思います?」

「鉄がない?」

 栗本さんは怪訝な顔をした。

「おいおい、その話は初耳だなあ。まさかこの家も釘が使われてないなんてことは……」

 金田さんが慌てて柱を調べにいこうとする。それを押し留めたのは林さんだった。

「それについちゃ調べるまでもない。俺が家を点検した際、確認済みだ。もちろん釘はたくさん使われている普通の家だぞ」
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