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模索と展望
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それは「希望」と言ってしまってよいのか分からないが、この世界に展望が開けることに繋がるかもしれない。ただし、まだ今の世界と前の集落があった世界が同一であると決まったわけではないのだが。
「健太君。君らの仲間がいた村はどこら辺りか見当はつかないのかね?」
夕食後にみんなで語り合ってる中で、金田さんが僕に話を振ってきた。
「ええ、残念ながら」
僕は首を振る。
「その集落が見つけられれば、同じ世界だってことになるから俺たちの行動範囲も一気に拡大するし、将来的な展望も開けてくるんだけどなあ」
金田さんは賢い人だ。知らない間に、僕と同様の思考過程を踏んでいたらしい。
「そうですね。それが喫緊の課題かも知れません」
「あの……狼煙とか上げるのはどうでしょう?」
そばで僕たちの会話を聞いていた海原君が遠慮がちで提案してきた。
「狼煙か……。うん、いいかもな。樹より高いところまで煙が上がれば、遠くから発見もできるし、そこに人がいることも分かる」
なるほど。そういえばそうだな。むしろ、前の集落で誰もそれを言い出さなかったのが不思議なくらいだ。
「やってみる価値はありますね。明日にでもやってみますか」
僕はすぐに海原君の発案に乗った。
「でも、外で火を使ったことは今までもありましたよね? それってもしかして狼煙みたいなもんじゃないですかね?」
しかし、当の海原君がまた疑問をぶつける。
「確かになあ。でも今まで上の方とか気にしたことなかったからなあ」
僕はこれまでの様子を思い出そうとしたが、どうもうまくない。
「うん。俺もさっきは二つ返事で賛成したが、よく考えると森の中にいたんじゃ、遠くの煙なんて見えないし、集落からでもよほど高くまで上がらないと確認出来ないよな。やっぱ難しいかもしれんな」
僕たち三人は、それぞれ腕を組んでまたまた考え込んでしまった。
「明日からの動きですが、二人組の一チームでも探索に携わったほうがいいと思うんですが」
沈黙を破る僕の言葉に金田さんが返す。
「その心は?」
「とにかく地道に歩き回るしかないと思うんです。生活基盤の確立も大事な仕事ですけど、誰かが来るのを待っているのでは、消極的過ぎます。この世界はかなり大きな世界と思われます。積極的に行動してこそ、人と人とが接触できるのではないかと考えます」
僕は伝えたかったことを一気に喋った。
「しかし、たった一組があてもなく歩いてるだけじゃ……」
「それでもやらないよりずっといいと思います」
「健太君。君らの仲間がいた村はどこら辺りか見当はつかないのかね?」
夕食後にみんなで語り合ってる中で、金田さんが僕に話を振ってきた。
「ええ、残念ながら」
僕は首を振る。
「その集落が見つけられれば、同じ世界だってことになるから俺たちの行動範囲も一気に拡大するし、将来的な展望も開けてくるんだけどなあ」
金田さんは賢い人だ。知らない間に、僕と同様の思考過程を踏んでいたらしい。
「そうですね。それが喫緊の課題かも知れません」
「あの……狼煙とか上げるのはどうでしょう?」
そばで僕たちの会話を聞いていた海原君が遠慮がちで提案してきた。
「狼煙か……。うん、いいかもな。樹より高いところまで煙が上がれば、遠くから発見もできるし、そこに人がいることも分かる」
なるほど。そういえばそうだな。むしろ、前の集落で誰もそれを言い出さなかったのが不思議なくらいだ。
「やってみる価値はありますね。明日にでもやってみますか」
僕はすぐに海原君の発案に乗った。
「でも、外で火を使ったことは今までもありましたよね? それってもしかして狼煙みたいなもんじゃないですかね?」
しかし、当の海原君がまた疑問をぶつける。
「確かになあ。でも今まで上の方とか気にしたことなかったからなあ」
僕はこれまでの様子を思い出そうとしたが、どうもうまくない。
「うん。俺もさっきは二つ返事で賛成したが、よく考えると森の中にいたんじゃ、遠くの煙なんて見えないし、集落からでもよほど高くまで上がらないと確認出来ないよな。やっぱ難しいかもしれんな」
僕たち三人は、それぞれ腕を組んでまたまた考え込んでしまった。
「明日からの動きですが、二人組の一チームでも探索に携わったほうがいいと思うんですが」
沈黙を破る僕の言葉に金田さんが返す。
「その心は?」
「とにかく地道に歩き回るしかないと思うんです。生活基盤の確立も大事な仕事ですけど、誰かが来るのを待っているのでは、消極的過ぎます。この世界はかなり大きな世界と思われます。積極的に行動してこそ、人と人とが接触できるのではないかと考えます」
僕は伝えたかったことを一気に喋った。
「しかし、たった一組があてもなく歩いてるだけじゃ……」
「それでもやらないよりずっといいと思います」
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