異世界転移物語

月夜

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捜索…発見

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 桂坂さんは「少し強引な推理のような気がするけど」と納得してないそぶりを見せた。

「とにかく、まだ彼らが近くにいる可能性も50%ぐらいの確率であるんじゃないかな。だから、彼らを探すことには意味があると思うんだ」

「そうね。昨日話し合ったように仲間探しをするのが今は優先てことね」

 桂坂さんも次の行動に関しては異議はないようだった。

 午前中、僕らは釣りに専念する釣りキチさんを残して二手に分かれて捜索を開始した。僕は桂坂さんとまず川の下流に向けて川沿いをしばらく歩いてみた。川は深いところもあり渡れないという話だったが、幅はそれほどないので向こう側も見える。もちろん向こう岸も樹々ばかりで特に変わったところはない。

 川沿いは河原が広いところもあればすぐそばまで樹々が迫っているところもあり、一様ではなかった。さっきのように誰かがいた痕跡はないかという点についても注意深く観察してつもりだったが、結局、川沿いの探索では何も成果がなかった。もう一つの組はどうだろうか?

「そろそろ川から離れて内側に入って行こうか」

「それがいいみたいね」

 何も成果がないことにやや疲れたのか、桂坂さんは考えるのは任せるとばかりに気のない返事をした。

 僕らは森側に進路を変更して、樹々の間に入っていった。以前とそれほど風景に違いがあるわけではない。今は適当な物を持ってないので、目印になるようなものをうまく付けられない。一応、石で樹に傷をつけるぐらいはしているので、一度訪れたかどうかぐらいは分かるかもしれないが。

 進めども進めども、開けた場所もなければ、湖や別の川などもなく、ただ森が続いていた。
迷子になるわけにもいかないので、記憶があるうちに戻り始めた。昼時には一度帰る予定にしてある。

 僕たちが横穴に戻ると、既に釣りキチさんら三人は戻っていた。僕たちを発見した料子さんが、嬉しそうな顔をしながら言った。

「見つけたわよ」

「えっ」

 正直、こんなに早く何かが見つかるとは思っていなかった。僕たちのほうが成果皆無だったために、あちらも同じようなものだろうと勝手に決めつけていた面はある。

「何があったんですか?」

 桂坂さんが気負った様子で尋ねる。

「新しい集落。そこにね、三人いたの。知らない人たちが」

「おおっ」

 まさか本当の別の集落があるとは! 

「家は5軒しかないけど、家の感じは前と似たようなものね」

「ええと、その三人とは話したんですか?」

「うん。自己紹介ぐらいは。とにかくみんなに知らせて一緒に行ったほうがいいと思ったから、とりあえずまた来ると伝えて帰ってきたの」
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