203 / 319
生活談議
しおりを挟む
「ほら見て。ビニール袋に葉っぱ詰めて、簡易的な枕と布団の代わり作ったのよ」
料子さんが自慢げにそれを見せてくれた。人間というのは土壇場になると色々知恵が回るものだ。ろくに荷物もない中で、いかに工夫していけるか。それが問われると思った。
「健太君たち、何か火を起こせるもの持ってない?」
釣りキチさんが訊いてきた。
「川で魚は釣れるんだけど、火を起こせなくてね。困ってたんだ」
「火ですか……ええと」
思い起こしてみても、バッグの中にライターかマッチを入れた記憶はない。僕はなんとなく作業着のポケットの中を漁った。すると偶然、一つのポケットにライターが入っていた。そういえばかなり前にポケットに慌てて入れたやつかもしれない。
「おお! ライターじゃないか。まさに渡りに船だね!」
釣りキチさんは興奮しながら僕からライターを受け取る。昼間、海原君が集めたという薪用の木々に火をつけた。燃え始めた炎によってその場が赤く照らし出され、幻想的な雰囲気になった。
その晩は魚を焼いて食べた。川魚もなかなか美味しい。腹ごしらえが出来たところで、僕らは明日からの動きを相談した。
「ここがどこら辺か見当がつく人いるかな?」
僕はあまり期待しないでみんなに一応訊いてみた。案の定、誰も有用な情報を持つ者はおらず、そこから探るのは難しそうだった。
「釣りキチさんたちは川沿いは歩いてみたんですか?」
「うん。釣り場を探すのも兼ねて多少はね。でもあまり遠くまで行ってないし、その範囲ではずっと同じ調子だったね」
「あの川はスカウトさんが発見した川とは違いますよね?」
釣りキチさんは即答しないで少し考え込んだ。
「実際に見たわけではないからなんとも言えないな。もしかしたらあの川がそうだ、ってこともあるかもしれない」
「川を渡ることはできそう?」
桂坂さんが訊いてくる。
「うーん。無理だと思う。川幅もあるし、割と深いよ」
釣りをするにあたってチェックしたのだろう。すぐに釣りキチさんが回答する。
「問題はこれからどうするかよね? ここである程度生活基盤を作っていくのか、仲間を探し歩くのか、あるいは他の集落などを探し続けるか、そんなあたりかな……」
料子さんが腕を組む。
「前みたいに新しい人が食料を持って来てくれるわけじゃないので、色々と厳しいですね。食料は今のところ魚だけになるし、他の生活用品も何もない。ここで生活するのはそんなに長く続けられないんじゃないかと思います」
僕は冷静に分析した。
料子さんが自慢げにそれを見せてくれた。人間というのは土壇場になると色々知恵が回るものだ。ろくに荷物もない中で、いかに工夫していけるか。それが問われると思った。
「健太君たち、何か火を起こせるもの持ってない?」
釣りキチさんが訊いてきた。
「川で魚は釣れるんだけど、火を起こせなくてね。困ってたんだ」
「火ですか……ええと」
思い起こしてみても、バッグの中にライターかマッチを入れた記憶はない。僕はなんとなく作業着のポケットの中を漁った。すると偶然、一つのポケットにライターが入っていた。そういえばかなり前にポケットに慌てて入れたやつかもしれない。
「おお! ライターじゃないか。まさに渡りに船だね!」
釣りキチさんは興奮しながら僕からライターを受け取る。昼間、海原君が集めたという薪用の木々に火をつけた。燃え始めた炎によってその場が赤く照らし出され、幻想的な雰囲気になった。
その晩は魚を焼いて食べた。川魚もなかなか美味しい。腹ごしらえが出来たところで、僕らは明日からの動きを相談した。
「ここがどこら辺か見当がつく人いるかな?」
僕はあまり期待しないでみんなに一応訊いてみた。案の定、誰も有用な情報を持つ者はおらず、そこから探るのは難しそうだった。
「釣りキチさんたちは川沿いは歩いてみたんですか?」
「うん。釣り場を探すのも兼ねて多少はね。でもあまり遠くまで行ってないし、その範囲ではずっと同じ調子だったね」
「あの川はスカウトさんが発見した川とは違いますよね?」
釣りキチさんは即答しないで少し考え込んだ。
「実際に見たわけではないからなんとも言えないな。もしかしたらあの川がそうだ、ってこともあるかもしれない」
「川を渡ることはできそう?」
桂坂さんが訊いてくる。
「うーん。無理だと思う。川幅もあるし、割と深いよ」
釣りをするにあたってチェックしたのだろう。すぐに釣りキチさんが回答する。
「問題はこれからどうするかよね? ここである程度生活基盤を作っていくのか、仲間を探し歩くのか、あるいは他の集落などを探し続けるか、そんなあたりかな……」
料子さんが腕を組む。
「前みたいに新しい人が食料を持って来てくれるわけじゃないので、色々と厳しいですね。食料は今のところ魚だけになるし、他の生活用品も何もない。ここで生活するのはそんなに長く続けられないんじゃないかと思います」
僕は冷静に分析した。
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる