異世界転移物語

月夜

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感動の再会

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「また周囲をうろうろしてるかもしれないな」

「みんなに無事に会えることを祈るしかないわね」

 しばらく歩いたが、樹々が続くばかりで寝ぐらになりそうな良い場所はなかなか見つからなかった。そのうち日も陰り始めたようで、辺りもやや暗くなってきた。

「スマホのライトつけるよ。とりあえず僕のだけ。二人とも電池がなくなってしまうとヤバいから」

 あいにくモバイルバッテリーは所持してなかったので充電手段がない。いずれは電池も切れてしまうだろう。懐中電灯を置いてきたのを今更ながら悔やんだ。

「この分だと適当な所で野宿する羽目になりそうだな」

「やっぱりそうなるのね……。寒くないからいいものの、野宿はできるものならしたくないわね……」

 動物がいないので危険度は低いものの、やはり屋外で寝るというのは不安なのだろう。僕にだってなるべくそれは避けたい気持ちはある。

「夜、いつまでも歩き回るわけにもいかないしな。とりあえずどこか適当な樹のそばででも休もうか」

 僕がそう言ったとき、僕は視線の端に何か動く光をとらえた。うん?

「今、何か見えたような……」

「ええ? 何も見えなかったけど……」

 桂坂さんからは後ろ向きになるので、見えなかったとしても不思議ではない。しかし、今見渡しても何もないように見える。

「おかしいなあ……。僕の気のせいかなあ」

 僕が不審に思いながらぼやっと景色を見ていると、再び視界の隅を光が横切った。

「あ、また」

 気のせいじゃない。確かに何かの光が動いてる。

「誰かいるのかも! 声を出して呼んでみよう」

 僕は桂坂さんも誘って「おーい!」と何度も叫んだ。すると、遠くから小さい声で「おーい!」と返ってきた。

 僕たちは声のする方に走り出した。近づくにつれ、向こうからもガサガサと近づいてくる物音が聞こえる。

「あっ!」

 お互いを発見しあって、共に同じ驚きの声を上げた。

「健太君と優子ちゃん!」

 向こうの光の正体は、料子さんが持っていた懐中電灯だった。

「料子さん! それに釣りキチさんに海原君か」

 僕たちは思わぬ再会を喜びあった。

「他の人たちも一緒ですか?」

「あ、いえ、私たちだけなのよ。この三人だけが同じ場所に飛ばされちゃって……」

「あとの人は見かけなかったけど、他のメンバーもどこかに消えたのかな?」

 釣りキチさんが僕に尋ねる。なるほど。当事者には全員いなくなったのか、三人だけなのか分からないわけだ。

「ええ。全員、突然行方不明になりました。薬剤師さんだけが少し遅れて歩いていたので、一人で帰ってきて報告してくれたんですが」

「そうなんだ。みんな大丈夫かなあ……」
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