異世界転移物語

月夜

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水汲み隊、再出発

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 今まではたまたま小さいものばかりが来ていたということも充分考えられる。この先、どんな危険があるかわかったもんじゃない。

 全員荷物を持ったが、まだまだトラックの上には荷物がかなり残っている。

「あと2、3回は来ないといけないみたいですね」

「そうだな。箱だからかさばるしな」

 僕は宝泉さんと顔を見合わせた。

 そんなことを繰り返して、夕方までには荷物を全部運び出すことが出来た。荷物が多いので、とりあえず空いている家に分類せずまとめて突っ込んだ。同時に手の空いてる人で中身を確認する。

 生ものもいくつかあったので、夕食はそれを優先的に使用した。人数が減った分、食糧には余裕が出てきたとも考えられるが、今後の食料確保の観点からはやはり厳しくもある。

 夜のミーティングでは、午前中に話し合ったことの再確認が主な内容だった。今日来た車さんの紹介も行われた。明日からはこのメンバーで、新しい人を毎日迎えながら生活してゆくことになる。

 翌朝、湖に行くメンバー、算田さん、宙、宝泉さん、エンジさん、桂坂さん、薬剤師さん、陸の七人が出発した。大工さんもなんとか応急的な水汲み容器を作ってくれた。

「薬剤師さん、昨日に続いてまた嫌なことを頼むことになりますが、よろしくお願いします」

 僕は昨日のことがトラウマになっているかもしれない薬剤師さんを気遣った。

「いえ、お構いなく。昨日のことが頭をよぎらないと言えば嘘になりますが、昨日も言ったように一人で行くわけじゃないんで大丈夫です」

 これなら薬剤師さんも心配はなさそうだ。僕は居残り組だから、今日は昨日のようなことが起こらないことを祈るだけだ。

 午前中、僕は農家さんやセンセとともに畑に入った。水汲み組のことが気になってあまり集中できない。彼らの帰還がいつになるか分からないが、遅くとも午前中には帰ってくるだろう。

「それにしても、ここ一昨日から昨日と色々あったわね」

 農作業の休憩中、センセが僕に話しかけてきた。

「ええ、火事もあったし、集団消失もありましたからね」

「私が来る前にはこんなじゃなかったの?」

「そうですね……」

 僕は少し考え込んだ。

「あまり大きな事件はなかったですね。割と平穏だったような」

「人数が増えたことが関係してるのかな?」

「さあ、どうでしょうかね」

 そうこうしている内に、昼飯の時間になった。しかし、水汲み組は誰も帰ってこない。まさか、また何か起こったのか? 僕はひどく不安になった。しかし、午後からは迎えもあるので僕がうかつに動くわけにもいかない。
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