異世界転移物語

月夜

文字の大きさ
上 下
193 / 319

間一髪

しおりを挟む
「でも正直びっくりしましたよ。今まであんな大きな物が来たことはなかったんで」

    僕は歩きながらあのシーンを思い出して身震いした。

「もっと近くにいたら危なかったかもね」

    桂坂さんも同様に怖がるそぶりを見せた。

「びっくりしたのはこっちのほうだぜ」

「どんな状況だったんですか?」

    車さんの切り返しに、興味津々といった様子で陸が尋ねる。

「荷物全部積んでよう。発進してすぐに信号に引っ掛かって、信号待ちしてたんだよ。そしたらいきなりくらっと目眩がしてハンドルに顔ぶつけそうになったんだ。やばって思ったら、次に気がついたらこれだ……。ほんの一瞬のことなんだがな」

「運転してる時じゃなくて良かったですね」

「あ、ああ、そう言えばそうだな。運転中なら事故ってたな。間違いなく」

「トラックも一緒に来たってことは、周りの車にも最小限の影響で済みそうね。運転手だけが消えてたら大騒ぎだったろうけど」

    桂坂さんが冷静に分析する。もっとも、どでかい車一台が丸々消えるのも、それはそれで大パニックになるだろうが。

「皆で一度検討したときにもその危険性は指摘されてたよな?  それがうまく回避されてるのは偶然なのか必然なのか……それが問題だな」

「どころでさっきの話。難しいことは分かんねえけど、俺みたいなやつがここにはたくさんいるってことか?」

「たくさんというか、今の所、全部で三十人ちょっとです。ですが、現在はそのうち六名は行方不明、十名は別の場所を探索中です。残ってるのは半分ほどですね」

「ふうん。なんとかここでみんなで暮らしてるってわけか」

   家に着くと、生果さんと介護士さんが出迎えてくれた。

「まあ、箱なんか抱えて。みんな大変だったんでしょ」

「驚きましたよ。トラックが来るんですから」

「トラック!?」

    二人は仰天した。僕は二人に詳しく説明した。その途中、桂坂さんが僕に提案した。

「健太君、みんなに声かけて集めたほうがいいかな?  何人かで荷物取りに行ったほうがいいでしょ」

「そうだな。じゃ、陸と二人で手分けして、農家さんたちや宝泉さんたちに声をかけてきてくれないか?」

   うなずくと二人は家を出て行った。

「箱の中身は早く調べたほうがいいわね。腐ってしまうような生ものは、早めに食べてしまうべきだろうし」

    生果さんが言う。

「食べ物がどれだけあるか分かりませんよ。僕は服とかが多いと睨んでるんですが」

「開けてみれば分かるわ」

    たとえば田舎の母から都会の息子への送るものであれば、伝票に書かれている物以外にもたくさん詰め込まれているような例が多々ある。そういう意味でも実際に開けてみるのが把握するには一番だ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...