異世界転移物語

月夜

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発見

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「それじゃ、今まで見てない方角をそれぞれ探して、今から一時間後にここにまた集合しましょう」

    再び僕らはグループごとに分かれ、捜索を続けた。しかし、二回目の捜索も各グループともに発見することは出来ず、徒労に終わった。

「これ以上は範囲が広すぎて、効率も悪いですね。僕ら以外は捜索を切り上げて帰ってもらったほうがいいかも知れません。僕らはもう一度暗くなるまで探してから帰ります」

    僕はみんなにそう伝え、他のグループは家に戻っていった。僕と笑美さんと宙は、一度探した場所も再び確認したりして、日が暮れるまで捜索を続行したが、結局、来訪者を見つけることは出来なかった。

   がっかりしながら三人で家まで帰ると、集落の入り口あたりで、湖から帰ってきた釣りキチさんたちとバッタリ出会った。

「お帰りなさい……あっ」

    釣りキチさんに挨拶した僕は、そこにもう一人の人物がいるのに気がついた。

「君は……」

   それはまだ幼さの残る顔立ちの少女だった。ショートヘアで少し日焼けしている。ただ上背は結構あって、僕より少し低いくらいだ。黒のジャージ姿でリュックを背負っている。

「風間陸(かざまりく)っていいます」

    陸と名乗った少女はペコリとあたまを下げた。思わず僕もお辞儀をする。

「湖に突然、この子が現れてね」

    釣りキチさんが陸を見ながら語り始めると、保育士さんがそれに続けた。

「見たことない少女だったんで驚いたんですが、私たちを見て嬉しそうな顔をしたので、慌てて事情を聞いたら、さっき来たばっかりだって。ははーん、これは今日の新しい来訪者だなってピーンと来て。一人でほっとくわけにもいかないから、釣りが終わるまで話して、こうやって一緒に帰ってきたわけなんです」

   僕は釣りキチさんたちに、今日の来訪者を迎えに行きそびれて、会えずじまいになり、みんなで捜索したことを伝えた。

「そっちじゃ、そんなことになってたのか……。良かったな、俺たちに会えて」

     最後は陸に向かって言った言葉だ。

「いきなり森の中だったもので……どうしていいか分からなくて……」

    申し訳なさそうに説明しようとする彼女を制して僕は言った。

「とりあえず家の中に入ろう。みんなも心配してるだろうし。話はそれからゆっくり聞かせてもらうよ」

    陸を伴って家に戻ると、数人が待っていて、陸がいることを知った一同は、みな安堵の顔になった。料子さんに聞き役をしてもらい、みんなで陸の話を聞いた。

「……というわけなんです」
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