異世界転移物語

月夜

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各隊報告

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「場に出現するときは、毎回誰かが立ち会っていた。ほとんど僕と桂坂さんだけど。少なくとも僕が対応した人に関しては、ここでダンボールを捨てた人はいないはずだ。他の人からもそんな話は聞いてないけど」

「だとすると……今回、来た人が移動の邪魔になるので捨てていった可能性が高いってことですか?」

    おそらくは宙の推理であっているだろう。僕もまったく同じ考えだ。箱のままでは運びにくいので、中身だけを持つことにしたのではないか。

「この先を歩いていったのかもしれないな」

「でも今日は少し風があるでしょ。ダンボールが飛ばされてここに来たってことも考えられるんじゃないかしら」

     笑美さんの言葉に、僕はなるほどと思った。ならば、こっちの方向に進んだと決めつけるのは早計かもしれない。

「そうだな。まあ、ともかく、ダンボールがあるっていうことは誰かがこの世界に来たって線は濃厚になったな」

    それなら探す意味もあろうというもの。存在自体が望み薄だと、徒労に終わるのが見えてる段階で既にやる気が起きてこない。

「このまま探しながら進む。適当な時間になったら、引き返して場で待機して他のグループが戻るのを待とう」

    僕は基本的な行動予定を指示した。その後も声を出しながら探し続けたが、該当する人物は見当たらなかった。もっとも性別も年齢も姿形もまったくわからないのではあるが。

    しかし、森の中には動物もいないわけで、動くものがあればそれは探している新たな来訪者に違いない。

    しばらく探したあと、一旦場に戻ることにした。出発地点に戻ると、大工さんのグループが先に戻っていた。

「見つかりませんでしたか?」

    僕は三人の表情を見て、空振りだったと予想はついたが、一応訊いてみた。

「ええ。全然。そっちは?」と生果さんが聞き返す。

「こっちも同じです。あっ、ダンボールを一つ見つけはしたんですけど」

「ダンボール?」

    僕は三人で話した推測を大工さんたちにも伝えた。

「じゃあ、新しく来た人は、ダンボールの中身だけを持って移動してるってことになるんですか?」

   海原君が問う。

「そうなるね。宛先の紙は剥がれていたので、中に何が入っていたかは不明だけど」

「他のグループが見つけられるといいんだけどね」

    生果さんが残念そうに言う。しばらくして他の二チームも帰ってきた。

「ダメだ。いない」

「こっちも」

    宝泉さんとエンジさんが肩を落としながら報告した。

「そんなに遠くに行ったとは思えないんですが……」

    弱音を吐きそうになった僕だが、すぐに気持ちを切り替えて、みんなに次の指示を出した。
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