異世界転移物語

月夜

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検討

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    夕方になると、意外なことにスカウトさんたちが帰ってきた。今日はまだ三日目だ。結局、二泊で切り上げたことになる。

「もうテントも撤収してきた。ちょっと早い時間だが、荷物が多いんで早めに向こうを出た」

    重い荷物を背中に抱えたスカウトさんは、家に入るとバサリと荷物を降ろした。

「川はどうでした?」

「それがな……。あまりいい報告ではないな」

    スカウトさんは顔をしかめた。

「川を少し下ったんですけど、池に繋がってたんですよ。湖と比べると全然小さい池なんですけどね。池は結構深いみたいで、水量的にはまだまだ貯めれる余裕があって、どうやらそこに川が流れ着いてるみたいなんです」

「池から先はないの?」

「ざっと周囲をぐるりと調べてみたが、池から流れ出る川は見つけられなかった。もしかしたら水の底に穴でもあるのかもしれないな」

まあ、そう考えるのが妥当だろう。

「丸一日、近隣も調べてみたが、特に発見はなかった。川があったのは朗報だが、実利はまりなさそうだな」

    どうやらスカウトさんたちは、成果なしなので、もう引き上げてくる判断をしたようだ。

    テントも戻ってきたので、もしかしたら明日にでも遠征隊が出発できるかもしれないな、と思った僕は、スカウトさんと自転車君に、昨日みんなで話し合ったことを伝えた……。

    夕食後のミーティングでは、簡単にスカウトさんからの報告があった後、いよいよ明日からの行動を検討した。

    スカウトさんも僕の話を聞いて、すぐに了解してくれて、明日にでも出発出来るならしたい、と言ってくれた。だから、この検討もスムーズに導入から入れた。

「行くメンバーは昨日検討した通りです。スカウトさんも自転車君もOKだそうなので、二人も含め、十人でお願いします」

「テントは三つとも持って行くけどいいよな?」とスカウトさん。

「ええ。大丈夫です。あと食料は余裕を持って準備してください」

「わかってるよ。そのあたりは抜かりない」

「電気関係では、ソーラーパネルとポータブル電源は持っていく。もう一つ小さいのがあるから、こっちもなんとかなると思う」

   電気さんがそう言うと、宝泉さんはうなずいた。

「医療面は相変わらずろくな薬も道具もないが、ナースさんにはある程度、薬とか渡すから持って行ってもらう」とドクター。

「水はどうするかな……」

    路木さんが心配げな顔をした。

「うーん、それが難しいんですよね。湧き水のある方向は、これから向かう方向と全然違うから、途中で湧き水を確保してってわけにもいかない。途中でうまい具合にきれいな水があればいいんですけど、そううまくはいかないでしょうね」
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