異世界転移物語

月夜

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介護さん

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   井後さんを家に連れて帰ると、料子さんと生果さんが受け入れてくれた。これも今後も変わらないはずだ。

「井後さんは以前から介護の仕事をされてるんですか?」

生果さんの質問に、井後さんは「いえ、そんなに」と一言言ったあと続けた。

「実は私、元看護師なんです。結婚してもしばらく続けてたんですけど、三人目が生まれた頃から子育ても忙しくなって退職したんです。そのあと下の子が中学に入ってから、介護の勉強を始めて、介護の仕事をするようになったので、まだそんなにベテランてわけでもないんですよ」

ちょうどナースさんがここを離れる予定なので、元看護師さんがいてくれるのは心強い。

「介護さんが来てるって?」

そう言いながら、電気さんと宝泉さんが顔を出した。

「井後です」

    井後さんは笑いながら答える。

「なんだ、おばちゃんか」と大工さん。

「それ、失礼すぎますよ」と桂坂さんが抗議するが、なんとなく和らいだ雰囲気が流れた。

「悪い、悪い。それで介護さん、あんたは何が得意なんだ?」

    ダメだ。大工さんはまた介護さんて言ってる。

「何って言われても。普通の家事なら一通りこなせるし、看護や介護ならそこそこ専門知識もあるわよ」

「それはすごいなあ」

   電気さんは心底感心したように、尊敬の眼差しで介護さんをみる。あ、僕も「介護さん」の呼び名が頭に刻み込まれてしまった。

「でもしばらくは介護の出番はないかもね。今、最高齢は農家さんで、他の人はまだまだバリバリ働ける年齢だからね」

「農家さんを老人呼ばわりすると怒られますよ」

   僕は生果さんに笑いながら忠告した。この場に農家さんがいれば、「誰が老人じゃ!」ってツッコミそうだ。

「まあ、今後、高齢者の方も来るかもしれませんけど」

   介護さんが持ってきたものを整理した。ほとんどは食材だ。それ以外は、カップとスプーンが4つ、茶碗とお碗も4組あった。きっと家族全員の分だろう。その他、大皿が一つ、箸やサランラップ、ティッシュ、ペーパータオル、テーブル拭き、それに鍋だ。

   食材のほうは二つの箱に大根、人参、タマネギなど新鮮な野菜が、種類も豊富に揃っている。バナナやメロン、イチゴなどフルーツ類もあった。

   最後の一箱には、米10kgが入っていた。他にテーブルの上にあったと思われる胡椒や七味の小瓶、醤油や酢も来ている。

   こうやってみると、近日新たな出発チームが持って行くのに好都合なものもたくさんある。
米は是非持っていきたいものの筆頭だろう。
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