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転移の瞬間
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疑問は増える一方だったが、日常生活は変わりなく進む。午前中、いつものように畑仕事をして、昼飯の時間になった。
家で昼食を摂っているのは、今日の場合だと
12名である。僕、桂坂さん、料子さん、ナースさん、笑美さん、理科さん、生果さん、電気さん、大工さん、ドクター、農家さん、北野君。電気さんや大工さん、理科さんなどは日によっては湖の方に出掛けたりもしているので、毎日多少の変動はある。夜に比べると人数は少ないが、それでも割と大所帯だ。
「ふと思ったんですけど……」
昼食中におもむろに笑美さんが切り出した。
「私たちがめまいに襲われてこちらに来る瞬間、車とか運転してたらどうなるんでしょうか?」
それを聞いて、皆一様にはっとした表情を見せた。
「運転中か……」と電気さんが繰り返す。
「考えたことなかったな」
「人が消えちゃうんだから、誰も運転する人がいなくなるってことでしょ。そのまま走ってどこかにバーンとぶつかって止まっちゃうんじゃないの? 人を轢いたり、爆発したりするかもしれないけど」
料子さんが手を広げる身振りをまじえて言った。
「そやな。絶対、事故るやろな」と北野君。
「車ぐらいなら交通事故程度でまだ済むけど、これが飛行機のパイロットとかなら、大変なことになるな」
電気さんの言葉を聞いて、僕はぞっとした。
「むしろ、今まで来た人が割と平穏に来れたのはある意味奇跡じゃない?」
生果さんの見方は面白い。確かに二十人もこちらに来ていたら、一人ぐらい危ない場面があってもおかしくないと思える。だが、そういった事例は今のところ皆無なのだ。
「車を運転していたら、車も一緒にこっちに来ちゃうってことはないのかな?」
少し考え込んでいた桂坂さんが口を開いて、新しい視点から問いを投げかけた。
「そうだな……。確かにそれはあり得るな。実際、自転車や一輪車などはこちらに来てるし」
「パイロットやったら飛行機も一緒に来たりしてな」
ドクターの答えに、北野君が反応した。どっと笑いが起きる。
「それはちょっとチート過ぎるような……」
つい真面目な答えをしてしまった僕だったが、農家さんはもっと現実的だった。
「車や飛行機か来ても、燃料がなけりゃ、ろくに使い物にならんわ」
「積み込んでる分だけしか使えないからな。燃料切れはすぐだ。それに飛行機が来たら、あちこちぶつかって壊れそうだし、飛べる場所もない。車だって走れるところなんかないよな」
大工さんも次々と問題点を指摘する。
家で昼食を摂っているのは、今日の場合だと
12名である。僕、桂坂さん、料子さん、ナースさん、笑美さん、理科さん、生果さん、電気さん、大工さん、ドクター、農家さん、北野君。電気さんや大工さん、理科さんなどは日によっては湖の方に出掛けたりもしているので、毎日多少の変動はある。夜に比べると人数は少ないが、それでも割と大所帯だ。
「ふと思ったんですけど……」
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「そやな。絶対、事故るやろな」と北野君。
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「そうだな……。確かにそれはあり得るな。実際、自転車や一輪車などはこちらに来てるし」
「パイロットやったら飛行機も一緒に来たりしてな」
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「それはちょっとチート過ぎるような……」
つい真面目な答えをしてしまった僕だったが、農家さんはもっと現実的だった。
「車や飛行機か来ても、燃料がなけりゃ、ろくに使い物にならんわ」
「積み込んでる分だけしか使えないからな。燃料切れはすぐだ。それに飛行機が来たら、あちこちぶつかって壊れそうだし、飛べる場所もない。車だって走れるところなんかないよな」
大工さんも次々と問題点を指摘する。
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