異世界転移物語

月夜

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凧の工夫

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「なあ、北野君。君、北海道だって言ってたけど、しゃべるの関西弁と違う?」

「ああ、それな。わい、北海道出身ちゃうねん。北海道は高校からや。それまでは全国あっちこっち行っとった。大阪にも何年かいたけどな。広島や九州、名古屋なんかにもおったことあるで。だからあっちこっちの言葉が混ざっとるんや」

「君のお父さん、何してるの?」

「製紙会社の営業や。最初は工場のほうやったんやけどな。営業に変わってからは全国の営業所に頻繁に転勤してるってことや」

    北野君の話は面白く、色々聞きたいことはあったが、その後簡単に名簿作りの聞き取りをして、晩飯までは畑のほうに行ってもらった。農家さんも心強いパートナーが来て、さぞかし喜んでいることだろう。

    僕は名簿を整理したあと、宙君の様子を見に行った。

「どう?   進んでる?」

   宙が作業用に使っているタツの家に入ると、かがみこんで熱心に作業をしている宙を驚かせないよう気をつけながら、そっと声をかけた。

「あ、健太さん」

   空いている家が多いので、こうしてゆったりとした作業場がとれるのはありがたい。ヘビの家を使い始めた理由はちゃんとある。これから人が増えて、トラの家以降も住居を使っていくことになるだろうから、数軒は住居用として開けておきたいし、かといってイノシシの家みたいなところだと少し距離が離れすぎていて、色々と不便だからである。ちなみに電気さんも隣のウマの家を作業場として使っている。

「へええ、結構大きいんだな」

    僕はほぼ完成していると思しき、宙の前にある凧を見て、率直に感想を告げた。

「そうですね。幅が2メートル近くありますね。今まで実験してみた結果、やっぱりこのぐらいの大きさは必要じゃないかと思ったんです」

    それとちょっとびっくりしたのは形が六角形だったことだ。

「これは前に凧を作ったときに、こんな凧もあるよって話があったのを思い出して、こっちの方が安定感があるかなと思って……」

「いろいろと工夫してるんだな」

「ええ、まあ。大工さんや電気さんの知恵も随分借りてますけど」

   今は電気さんも大工さんもここにはいない。他の仕事をしているようだ。

「ただ、揚げ糸がいいのがなくて……。みんなの荷物の中にかなり細いロープがあったんで、それでやろうかとは思ってるんですけど、強度はあっても重くなるのでそこが心配です」

「そうだね……。普通はタコ糸使うもんな。どっかにないかな?」

「糸巻きも必要なので、大工さんに作ってもらってるところですが、ロープだとそれも太くなりますけどね……」
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