異世界転移物語

月夜

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明日の行動計画

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「そうですね。寝袋もまたひとつ増えましたし、自転車君がOKならやってみてもいいかもしれないですね」

    目を丸くして俺たちの会話を聞いていた自転車君もやっと納得したようだ。

「ああ、そういう話でしたか。それなら僕もテントで寝泊まりしても全然構いませんよ。むしろ楽しいかなって」

「よし、決まりだ。今夜にもみんなに話してみよう」

    夕食は山菜さんの持ってきたバーベキュー用の食材が主体だった。日持ちしないのだから、さっさと食べてしまうしかない。その分、豪華な食事になって僕は嬉しかった。

    今夜の食事時の主役は山菜さんだった。あの開けっぴろげな性格と話題の豊富さも相まって、一夜にしてちょっとした人気者ポジションを確保したようだ。明るく盛り上げる人が増えてくれるのは、僕も嬉しい。

    夕食後には、僕の提案通り、みんなネズミの家で集まった。それぞれの進捗状況や、現在の食料在庫状況などの報告があったあと、スカウトさんがテントでの一泊を計画していることを伝えた。

「そうか。泊りがけで探索に行くってことは、直線で進むとすれば、単純計算で二倍の距離まで探索出来るってことなんだよな」

    ドクターがすぐにスカウトさんの意図を察した。

「そうなんです。日帰りで探索出来る範囲はもう調べ尽くした感があるし、それ以上進むとすれば帰れなくなる恐れがある」

「いいんじゃない。何が見つかるか楽しみね」

    料子さんが真っ先に賛成する。

「本当はあたしも行きたいぐらいだけどな。山歩きには慣れてるしな」

    山菜さんが残念そうに言う。

「それなんですけど。山菜さんには別の仕事をしてもらいたいんです。森を別口で回って、食べれそうな新たな食材を見つけてもらうっていう」

    僕は事前にスカウトさんにも相談して、山菜さんにふさわしい役目を考えていた。

「ああ、いいよ。そっちもやりたかったしな」

「単独行動ってわけにもいかないので、桂坂さんかナースさんあたり、一緒に行ってもらえませんか?」

    僕の言葉に、桂坂さんとナースさんは顔を見合わせたが、すぐに桂坂さんが「じゃあ、私が」と遠慮がちに申し出た。

「では桂坂さんと山菜さんでやってもらいましょう。お昼はどうしようかなあ……。山菜さん、こっちに戻らないで一日歩き回ったほうがいいですか?」

「 そうだな……。そのほうが効率はいいわな。そうしようか。あたし、今日たっぷり寝たし」

    最後のセリフで少し笑いが起こった。

「じゃあ、昼は戻らなくていいです。場への迎へは僕とナースさんでいくことにしましょう」

    ナースさんは「はい」と小さい声で答えながらうなずいた。
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