120 / 319
危険な賭け
しおりを挟む
「下手すれば宙と新しく来た人の体が混ざってぐしゃぐしゃになるとかな」
「ちょっとやめてよ~。怖いの想像しちゃったじゃない!」
僕の極端な連想で桂坂さんをビビらせてしまった。
「そんなことにはならないと思います。たぶん。お願いします。やらせてください」
宙があまりに熱心に頼み込むので、僕と桂坂さんは最後には折れて、了承した。
「どうなっても知らないからね」
場に着くと、宙は出現予定場所に立って、その時を待った。僕たちもいつも以上に緊張する。一体どうなるのだろうか……
時間が来た。宙を包み込むように白い靄がかかり始める。その途端、靄の中から宙が弾き飛ばされた。
「痛っ!」
白い靄が消え、リュックを背負った女の人が現れた。山歩きの姿で、何か抱えている。
「何、何?」
女の人はすぐにキョロキョロと辺りを見回した。倒れ込んでいた宙も起き上がる。
「ええと。はじめまして。僕は天原宙っていいます」
「はっ? あなた誰? って、名前は言ったか。ここ、どこ?」
「森の中です」
「それは分かるけど……」
僕らも彼女に近づいた。
「僕は田所健太といいます。こっちは桂坂優子さん。驚かないでくださいね。あなたは違う世界に飛ばされて来たんです」
「はい?」
女の人は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をした。そういえば少し顔が鳩に似ている、という不謹慎なことを考えてしまった。
「ここはあなたがいた日本とは違う世界みたいなんです」
「何それ? 異世界ってやつ? あなた頭大丈夫? アニメとかの見過ぎじゃないの?」
矢継ぎ早に質問を投げかける。少しだけ罵倒されてるような気もするが。
「あなた……ええと、名前を聞かせてもらえますか。なんか呼ぶ時不便なので」
「見ず知らずの人にいきなり名前なんか……まあ、いいわ。私の名前は山菜瑠璃美(やまなるりみ)。よろしくね」
「るる、るるりさんですか」
「ちっ、ちっ。る、り、み。るりみよ」
「りるみさん、りりるさん?」
「わざとでしょ」
僕はマジに呂律が回らなかった。本当に言いにくい名前だ。
「ええい、もういいわ。面倒くさいから山菜(さんさい)って呼んで。友達もみんなそう呼んでるから」
「山菜って、わらびとかそういうのですか?」
宙が尋ねる。
「そう。私、山歩き好きなんで、それもあってみんなやまなじゃなく、さんさいって呼ぶのよ、私のこと」
発言の様子からすると、かなりさばさばした性格のようだ。
「で、一体これはどういうこと?」
「さっきも言ったように、山菜さんは現代日本からこの異世界の森に瞬間移動したんです」
「ちょっとやめてよ~。怖いの想像しちゃったじゃない!」
僕の極端な連想で桂坂さんをビビらせてしまった。
「そんなことにはならないと思います。たぶん。お願いします。やらせてください」
宙があまりに熱心に頼み込むので、僕と桂坂さんは最後には折れて、了承した。
「どうなっても知らないからね」
場に着くと、宙は出現予定場所に立って、その時を待った。僕たちもいつも以上に緊張する。一体どうなるのだろうか……
時間が来た。宙を包み込むように白い靄がかかり始める。その途端、靄の中から宙が弾き飛ばされた。
「痛っ!」
白い靄が消え、リュックを背負った女の人が現れた。山歩きの姿で、何か抱えている。
「何、何?」
女の人はすぐにキョロキョロと辺りを見回した。倒れ込んでいた宙も起き上がる。
「ええと。はじめまして。僕は天原宙っていいます」
「はっ? あなた誰? って、名前は言ったか。ここ、どこ?」
「森の中です」
「それは分かるけど……」
僕らも彼女に近づいた。
「僕は田所健太といいます。こっちは桂坂優子さん。驚かないでくださいね。あなたは違う世界に飛ばされて来たんです」
「はい?」
女の人は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をした。そういえば少し顔が鳩に似ている、という不謹慎なことを考えてしまった。
「ここはあなたがいた日本とは違う世界みたいなんです」
「何それ? 異世界ってやつ? あなた頭大丈夫? アニメとかの見過ぎじゃないの?」
矢継ぎ早に質問を投げかける。少しだけ罵倒されてるような気もするが。
「あなた……ええと、名前を聞かせてもらえますか。なんか呼ぶ時不便なので」
「見ず知らずの人にいきなり名前なんか……まあ、いいわ。私の名前は山菜瑠璃美(やまなるりみ)。よろしくね」
「るる、るるりさんですか」
「ちっ、ちっ。る、り、み。るりみよ」
「りるみさん、りりるさん?」
「わざとでしょ」
僕はマジに呂律が回らなかった。本当に言いにくい名前だ。
「ええい、もういいわ。面倒くさいから山菜(さんさい)って呼んで。友達もみんなそう呼んでるから」
「山菜って、わらびとかそういうのですか?」
宙が尋ねる。
「そう。私、山歩き好きなんで、それもあってみんなやまなじゃなく、さんさいって呼ぶのよ、私のこと」
発言の様子からすると、かなりさばさばした性格のようだ。
「で、一体これはどういうこと?」
「さっきも言ったように、山菜さんは現代日本からこの異世界の森に瞬間移動したんです」
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。


RD令嬢のまかないごはん
雨愁軒経
ファンタジー
辺境都市ケレスの片隅で食堂を営む少女・エリカ――またの名を、小日向絵梨花。
都市を治める伯爵家の令嬢として転生していた彼女だったが、性に合わないという理由で家を飛び出し、野望のために突き進んでいた。
そんなある日、家が勝手に決めた婚約の報せが届く。
相手は、最近ケレスに移住してきてシアリーズ家の預かりとなった子爵・ヒース。
彼は呪われているために追放されたという噂で有名だった。
礼儀として一度は会っておこうとヒースの下を訪れたエリカは、そこで彼の『呪い』の正体に気が付いた。
「――たとえ天が見放しても、私は絶対に見放さないわ」
元管理栄養士の伯爵令嬢は、今日も誰かの笑顔のためにフライパンを握る。
大さじの願いに、夢と希望をひとつまみ。お悩み解決異世界ごはんファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる