118 / 319
今日の日付
しおりを挟む
「宙、やってみる?」
僕はズバリと本人に訊いた。宙がやりたいというならやらせてみてもいいんじゃないか、僕はそう思っていた。
「はい」
宙は嬉しそうに大きくうなずいた。
「スカウトさん、どうでしょうね。若手の労働力は是非欲しいところですが、宙に凧づくりを担当させていいですかね?」
僕はスカウトさんに確認を求めた。
「構わないよ。電気さんも大工さんもそれでいいだろ?」
「ああ、俺たちは反対ってわけじゃねえ。むしろ困ったことがあったら俺に相談しろ。出来る限りサポートしてやるから」
「ありがとうございます!」
宙は電気さんに深々とお辞儀をした。
朝方、そんなことがあったものの、僕は相変わらず農家さんの助手という立場で農作業に勤しむというのが午前中の動き。畑の方は、今のところ、枯れてしまうなどの大きなトラブルはないようだった。
植え付けした野菜は夏野菜が主で、ピーマン、ナス、オクラ、キュウリ、トマトなど。しかし、堆肥や石灰などもなく、施肥が出来ないことから、発育管理は困難を極めるらしい。
順調にいけば、七月始めごろには収穫出来るのではないかと農家さんは言っていたが、実際のところどうか分からない。
七月始めと言ったが、これはあくまで暫定的な日付けである。ここにはもちろんカレンダーもないし、今の日付がいつかなんか本当のところは分からないのだけれど、そのままではやはり困る。だから皆で相談して、暫定的な日付を決めておくことにしたのだ。
基準となったのは、来訪者第一号の僕が来た日を5月20日と設定して、そこから今の日付を仮に決めておくことにした。つまり僕以外は、ある意味少し先の未来にタイムスリップしたってことになる。僕だけが実感通りの時の流れってわけだ。
その結果、今日は十八日目なので、6月6日ということになる。曜日はあまり意味がないので、ここでは特に使っていない。日本ではそろそろ梅雨に入ろうか、という頃である。
昼食の際、凧の件を宙に聞いてみたら、かなり進んだようだった。
「材料を集めるところから始め、設計図を書いて、試作し始めるとこまで行きました」
「材料はちゃんと揃ったの?」
「たぶん。まあ実際にあげてみないことには、不足している部品も分からないですけどね」
「今日は風がないから、試作品が出来たとしても実験できないね」
「そうですね。少しでも風があれば、走りながらある程度はあげられると思うんですが」
宙は残念そうな表情を見せた。
僕はズバリと本人に訊いた。宙がやりたいというならやらせてみてもいいんじゃないか、僕はそう思っていた。
「はい」
宙は嬉しそうに大きくうなずいた。
「スカウトさん、どうでしょうね。若手の労働力は是非欲しいところですが、宙に凧づくりを担当させていいですかね?」
僕はスカウトさんに確認を求めた。
「構わないよ。電気さんも大工さんもそれでいいだろ?」
「ああ、俺たちは反対ってわけじゃねえ。むしろ困ったことがあったら俺に相談しろ。出来る限りサポートしてやるから」
「ありがとうございます!」
宙は電気さんに深々とお辞儀をした。
朝方、そんなことがあったものの、僕は相変わらず農家さんの助手という立場で農作業に勤しむというのが午前中の動き。畑の方は、今のところ、枯れてしまうなどの大きなトラブルはないようだった。
植え付けした野菜は夏野菜が主で、ピーマン、ナス、オクラ、キュウリ、トマトなど。しかし、堆肥や石灰などもなく、施肥が出来ないことから、発育管理は困難を極めるらしい。
順調にいけば、七月始めごろには収穫出来るのではないかと農家さんは言っていたが、実際のところどうか分からない。
七月始めと言ったが、これはあくまで暫定的な日付けである。ここにはもちろんカレンダーもないし、今の日付がいつかなんか本当のところは分からないのだけれど、そのままではやはり困る。だから皆で相談して、暫定的な日付を決めておくことにしたのだ。
基準となったのは、来訪者第一号の僕が来た日を5月20日と設定して、そこから今の日付を仮に決めておくことにした。つまり僕以外は、ある意味少し先の未来にタイムスリップしたってことになる。僕だけが実感通りの時の流れってわけだ。
その結果、今日は十八日目なので、6月6日ということになる。曜日はあまり意味がないので、ここでは特に使っていない。日本ではそろそろ梅雨に入ろうか、という頃である。
昼食の際、凧の件を宙に聞いてみたら、かなり進んだようだった。
「材料を集めるところから始め、設計図を書いて、試作し始めるとこまで行きました」
「材料はちゃんと揃ったの?」
「たぶん。まあ実際にあげてみないことには、不足している部品も分からないですけどね」
「今日は風がないから、試作品が出来たとしても実験できないね」
「そうですね。少しでも風があれば、走りながらある程度はあげられると思うんですが」
宙は残念そうな表情を見せた。
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる