異世界転移物語

月夜

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今日の日付

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「宙、やってみる?」

    僕はズバリと本人に訊いた。宙がやりたいというならやらせてみてもいいんじゃないか、僕はそう思っていた。

「はい」

     宙は嬉しそうに大きくうなずいた。

「スカウトさん、どうでしょうね。若手の労働力は是非欲しいところですが、宙に凧づくりを担当させていいですかね?」

     僕はスカウトさんに確認を求めた。

「構わないよ。電気さんも大工さんもそれでいいだろ?」

「ああ、俺たちは反対ってわけじゃねえ。むしろ困ったことがあったら俺に相談しろ。出来る限りサポートしてやるから」

「ありがとうございます!」

    宙は電気さんに深々とお辞儀をした。

    朝方、そんなことがあったものの、僕は相変わらず農家さんの助手という立場で農作業に勤しむというのが午前中の動き。畑の方は、今のところ、枯れてしまうなどの大きなトラブルはないようだった。

    植え付けした野菜は夏野菜が主で、ピーマン、ナス、オクラ、キュウリ、トマトなど。しかし、堆肥や石灰などもなく、施肥が出来ないことから、発育管理は困難を極めるらしい。

    順調にいけば、七月始めごろには収穫出来るのではないかと農家さんは言っていたが、実際のところどうか分からない。

    七月始めと言ったが、これはあくまで暫定的な日付けである。ここにはもちろんカレンダーもないし、今の日付がいつかなんか本当のところは分からないのだけれど、そのままではやはり困る。だから皆で相談して、暫定的な日付を決めておくことにしたのだ。

    基準となったのは、来訪者第一号の僕が来た日を5月20日と設定して、そこから今の日付を仮に決めておくことにした。つまり僕以外は、ある意味少し先の未来にタイムスリップしたってことになる。僕だけが実感通りの時の流れってわけだ。

    その結果、今日は十八日目なので、6月6日ということになる。曜日はあまり意味がないので、ここでは特に使っていない。日本ではそろそろ梅雨に入ろうか、という頃である。

    昼食の際、凧の件を宙に聞いてみたら、かなり進んだようだった。

「材料を集めるところから始め、設計図を書いて、試作し始めるとこまで行きました」

「材料はちゃんと揃ったの?」

「たぶん。まあ実際にあげてみないことには、不足している部品も分からないですけどね」

「今日は風がないから、試作品が出来たとしても実験できないね」

「そうですね。少しでも風があれば、走りながらある程度はあげられると思うんですが」

   宙は残念そうな表情を見せた。
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