異世界転移物語

月夜

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宙のアイディア

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    スカウトさんは僕の剣幕に少したじろいでいるようだった。

「遠くまで探索出来る利点は僕も認めます。でも、二人で行ける体制が整ってからでも遅くはないと思います。今は安全を最優先してください」

     僕はきっぱり言った。するとスカウトさんは、やれやれという表情を見せた。

「健太がよもや俺に説教するとはな」

「説教じゃなくて、アドバイスです」

「いや、説教でいいんだ。俺の暴走を止めてくれるやつが必要だったのかもな。前にも言ったが、やっぱお前はしっかりしてるよ。リーダー向きだな」

    スカウトさんは僕を優しく見守るような目をした。

「そういえば、リーダーの件、スカウトさん、結局みんなに話してなかったですよね」

「ああ、何となく機会を逸したというか……まだ早いのかな、と思ったんだ」

「僕はやっぱりスカウトさんにリーダーをして欲しいです」

「いや、今朝のお前の言葉を聞いて、やはり健太が適任だとあらためて思う。全体をみて、的確に判断を下せる逸材だとな」

「買い被りすぎですよ。それより野宿の件は諦めてもらえますよね?」

「ああ、もっと装備が整ってからにするよ」

    スカウトさんがどうやら諦めたようで、僕がほっとしていると、そばから大きな声が聞こえてきた。

「たこだと?」

    大工さんの声だ。

「どうしたんです?」

    僕たちはそこへ近づいた。

「いや。宙がな、凧を作ったらどうかって」

     大工さんの近くには宙と電気さんがいた。

「今、大工さんと電気さんの会話を聞いてたら、スマホをどうやって高いところに持っていくかみたいな話だったので、凧を上げたらどうかと思ったんです」

     宙が慌てて僕たちに説明した。

「なるほどな……凧なら風があればかなり高くはあがるが……」

     スカウトさんが実現可能かどうか探るように考えこむ。

「材料はあるんですか?」

「僕、小学生の時に何度か作ったんで作り方分かりますよ。材料も布か紙と丈夫な糸、それに木材があれば作れます」

    宙が任せてくれ、と言わんばかりに堰を切ったように話す。

「でもよ、ここって風の強い日があまりない。それにスマホだって結構な重さがあるんだから、高く上げるにはそれなりのテクニックがいるぞ、たぶん。落ちてスマホが壊れる危険性も大きいしな」

    大工さんが冷静に分析する。

「まあ、でもやるだけやってみてもいいかも。実際にスマホを飛ばすのは本番だけにして、別の重しで何度もチャレンジしてみれば、その内成功することもあるかもしれない」

    電気さんは宙の考えを後押しした。
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