異世界転移物語

月夜

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大工さんの歓喜

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「いやいや、どっちみち自分の意思でどうこうなるもんじゃないです」

   僕のクソ真面目な返答に杉浦さんは軽く笑った。

   ちょうど大工さんが外から家の中に入ってきたので、杉浦さんを紹介した。

「ほお。電気屋か。電気さんがいるなら心強い。俺は電気のことはそんな詳しくねえからな」

「え、でも今電気使うものってあんまりないですよ」

    僕の疑問に大工さんはきつい表情で答えた。

「そりゃ、今はあんまり役に立たねえかもしれんが、いずれは必要になるはずだ。現に物もどんどん増えてるじゃねえか」

    確かに。僕が最初に来た時と比べたら、今の便利さは雲泥の差だ。

「大工さんですよね。これ、色々使えますか……」

   杉浦さんは、持ってきた袋を大工さんに見せる。

「おお、ボルトじゃねえか。これは助かる。釘もあるじゃねえか!」

    大工さんは袋の中を見て歓声を上げた。

「あらあら、嬉しそうね」

   そんな大工さんを見て感想を述べる料子さんは、さらに続けた。

「でも、まさか米が手に入るとはね……」

    あとでみんなで確認したところ、米以外にもフルーツの缶詰や缶ジュースなども持ってきていたことが分かった。

   夜になりスカウトさんや釣りキチさんたちが帰ってくると、やはり発電機があることに驚いたようだった。スカウトさんは多少電気の心得があるみたいで、杉浦さんと専門用語を交えて話をしていた。

    今晩の夕食には流石にご飯は出なかった。貴重な米なので、とりあえず保存しておこうというので、女の人の間で話し合ったみたいだ。

    夕食が終わって片付けをしていると、理科さんがみんなに呼びかけた。

「ちょっとみんなに聞いて欲しい話があるの。昨日の星の観測結果についてなんだけど」

   僕らは片づけ後に、ネズミの家に集まって、理科さんの説明を聞くことになった。
理科さんは、紙とペン、それにノートパソコンも使う用意をしていた。

「ええと、どこから説明すればいいのかな。皆さん、北極星は知ってますよね。こぐま座の星です。ほとんど真北にあるので、進路の決定などで利用されますよね」

   そのあたりの話は皆、理解しているようだ。まあ、小学校レベルではある。

「この北極星なんですが、この星は地球の自転軸の延長線上にあるわけです」

    そう言いながら、理科さんは自らが紙に描いた図を見せてくれた。

「ところが、この自転軸は傾きの方向が少しずつ変わっているんです。コマに例えると、軸がふらついている状態。このふらつきの周期が約二万六千年です」

    そろそろ僕は話についていけなくなりそうだ。
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