異世界転移物語

月夜

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電気

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    釣りキチさんと保育士さんを湖に残して、水汲み組の面々は午前の終わりに帰途についた。家に戻って、それぞれの持ち帰った水を大きな容器にまとめたりした。

「あれからもう少し調べてみたけれど、多分、水は大丈夫。細菌検査の結果が出るまでまだ時間がかかるけど、そもそも煮沸してから使えば心配いらないわ」

    理科さんが僕たちにそう報告した。

「昨夜の星の観測で何か分かりました?」

   僕は昨日のことを思い出しながら、理科さんに訊いてみた。

「そっちのほうは分析はまだね。コンピュータでデータ分析してみないと何も分からないわ」

    ノートパソコンも電力を消費するから、モバイルバッテリーの充電もソーラーのみであまり出来ていないので、使い方を考える必要があるだろう。使うときに集中して使用しないと効率も悪い 。

    昼食後、僕と桂坂さんが場で出会ったのは、40代くらいの男性だった。名前は杉浦満さんという。本職は電力会社に勤めていて、第一種電気工事士の資格を持っているそうだ。

    驚いたのは、足元に発電機をともなって現れたこと。

「それは……」

「ああ、これか。これは家庭用の発電機だよ」

「あ、仕事で使うんですか?」

    杉浦さんは、軽く笑いつつ答えた。

「いや、これは俺の工作室に置いてたやつさ。趣味の電気工作で色んなもの作るのが好きなんだ。だから専用の工作室をもってるんだけどね」

「はあ……」

    僕はあまりイメージが湧かなかった。

「これはもちろん既製品だよ。工作の方は電気で動くおもちゃとかロボットとか」

「杉浦さんはこちらに来る前、その家の工作室にいたんですか?」

「ああ、そうだ。君たちから話を聞いた時はびっくりしたよ。ここが元々いた世界じゃないかもしれないなんてな」

   話の内容とは裏腹に、杉浦さんはそれほど驚いている感じはしなかった。

「俺んちの工作室さあ、色んなものがとっ散らかってんだよなあ。とても他人に見せられたもんじゃない」

「だからそんなものがあるんですね……」

    僕はようやく腑に落ちた。杉浦さんのそばに一緒に現れた袋の中に、お米が5kg入ってたからだ。

「まあ、米はなんであの部屋にあったのが自分でも忘れち待ってるけどな」

    と杉浦さんは大笑いする。それにしても、お米は久しぶりに目にした。みんなで少しずつご飯を食べるには十分な量だ。たまには悪くない。

「あと、他の袋にはボルトやナット、ドライバー、スパナなんかの工具類、それから……」

「あ、詳しい話は家に行ってからにしましょう」

    僕は杉浦さんの話をさえぎると、三人で家に向かった。
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