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夜空
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理科さんが僕に声をかけてきたのは、夕食の時、僕が理解できずにぼーっとして聞いているのを見とがめたのかもしれない。教師をやっているだけあって、生徒の動向には目を配る習慣があるのだろう。
外に出て夜空を見上げると、そこには満天の星空があった。雲も少し出てはいるが、それ以外は煌めく星々で埋め尽くされている。空にはこんなにも星があったのか!
僕はその壮観な景色に鳥肌が立った。普段、都会に住んでいると夜でもほとんど星は見えない。こんなに星を見たのは生まれて初めてだった。
「もう月は沈んだようね」
理科さんが西の空を見ながら言う。樹々に囲まれているため、地平線などはもちろん見えないが、確かに西の空の下のほうは多少明るい感じがする。
「今晩は晴れているから観測しがいがあるわ」
理科さんは南の空を指差した。
「健太君、あれが何座か分かる?」
僕に分かるわけない。
「ええと……オリオン座?」
僕が知っている星座といえば、オリオン座とカシオペア座くらいだ。
理科さんはケラケラと笑いながら答えた。
「どうやら健太君は理科は苦手だったようね。南の真正面に見えるのはおとめ座よ。ほら星占いで聞いたことあるでしょ?」
うん。確かに星座占いでは馴染みのある星座だ。ちなみに僕の星座は獅子座だ。
「あの明るい星がスピカ。それ以外はそんなに明るい星はないんだけど、おとめ座は割と分かりやすい形をしているわ」
理科さんはそう言いながら、指を動かして形を説明してくれた。僕は空を見てもイマイチ形がよく分からなかったが。
「ちなみに健太君は何座生まれ?」
「獅子座です」
「あら! 奇遇ね。私も獅子座なの」
理科さんの顔がほころんだ。
「ちょっと見えづらいけど、あの西の空にあるのが獅子座だよ」
そう言って西の空を見る。僕も視線をそちらに向けた。
「全然ライオンに見えないんですけど」
「ははは。そりゃそうね。真ん中の方にちょっと明るい星があるでしょ。あれはレグルスといって一応一等星なのよ。まあギリギリだけどね。その周りを線で結ぶと右向きのライオンの図になるのよ。今見えてるのは下向きになってるけどね」
ライオンにはとても見えないが、右向きの動物らしきものはなんとなく想像出来た。
「この時間におとめ座が真南にあるってことは、もしここが日本なら6月前半から中旬てところかな……」
一年周期で星座が移動してゆくのは僕でも分かる。星座を見れば季節が分かることぐらいはさすがに知っているが、おとめ座を見ただけで時期を特定できるなんてすごいと思った。
外に出て夜空を見上げると、そこには満天の星空があった。雲も少し出てはいるが、それ以外は煌めく星々で埋め尽くされている。空にはこんなにも星があったのか!
僕はその壮観な景色に鳥肌が立った。普段、都会に住んでいると夜でもほとんど星は見えない。こんなに星を見たのは生まれて初めてだった。
「もう月は沈んだようね」
理科さんが西の空を見ながら言う。樹々に囲まれているため、地平線などはもちろん見えないが、確かに西の空の下のほうは多少明るい感じがする。
「今晩は晴れているから観測しがいがあるわ」
理科さんは南の空を指差した。
「健太君、あれが何座か分かる?」
僕に分かるわけない。
「ええと……オリオン座?」
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理科さんはケラケラと笑いながら答えた。
「どうやら健太君は理科は苦手だったようね。南の真正面に見えるのはおとめ座よ。ほら星占いで聞いたことあるでしょ?」
うん。確かに星座占いでは馴染みのある星座だ。ちなみに僕の星座は獅子座だ。
「あの明るい星がスピカ。それ以外はそんなに明るい星はないんだけど、おとめ座は割と分かりやすい形をしているわ」
理科さんはそう言いながら、指を動かして形を説明してくれた。僕は空を見てもイマイチ形がよく分からなかったが。
「ちなみに健太君は何座生まれ?」
「獅子座です」
「あら! 奇遇ね。私も獅子座なの」
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「ちょっと見えづらいけど、あの西の空にあるのが獅子座だよ」
そう言って西の空を見る。僕も視線をそちらに向けた。
「全然ライオンに見えないんですけど」
「ははは。そりゃそうね。真ん中の方にちょっと明るい星があるでしょ。あれはレグルスといって一応一等星なのよ。まあギリギリだけどね。その周りを線で結ぶと右向きのライオンの図になるのよ。今見えてるのは下向きになってるけどね」
ライオンにはとても見えないが、右向きの動物らしきものはなんとなく想像出来た。
「この時間におとめ座が真南にあるってことは、もしここが日本なら6月前半から中旬てところかな……」
一年周期で星座が移動してゆくのは僕でも分かる。星座を見れば季節が分かることぐらいはさすがに知っているが、おとめ座を見ただけで時期を特定できるなんてすごいと思った。
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