66 / 319
森と自転車君
しおりを挟む
スカウトさんの希望に満ちた言葉は、僕の心まで明るくしてくれる。ただの缶からそんな風に考えられるのっていいなと思った。
「そういえば、今日自転車君と一緒に森の中を探索したんだが、やはり方位磁石があると助かるな。正確に方角が分かると、迷わずに進める」
話題は変わって、今日の森の探索の話になった。スカウトさんたちは、簡単な手書きの地図を持って探索していたはずだ。探索するたびに書き込みが増え、かなり内容も充実している。それに加え、方位が正確に分かれば確かにスムーズに移動出来るのかもしれない。
「体力には自信あったんですが、結構疲れますね~」
話す内容とは裏腹に、自転車君は僕から見たらまったく疲れてないように見える。
「正直、森を抜けられないわけないじゃん! とタカを括っていたんですが、甘かったです……ありゃ、なかなか無理そうですね」
一日歩き回ってそれを悟ったようだ。そうだろ。今まで僕やスカウトさんが散々歩き回っても、何も見つけられなかったんだから。こんなことで優越感に浸るのも大人気ないが、悪い気持ちはしなかった。
「それでも探索はこれからも続けていかなくちゃならん。人が増えてくれば、ここもだんだん手狭になってくるだろうし」
スカウトさんは真剣な表情でそう言ったあと、一言付け加えた。
「まあ、それはかなり先の話だとは思うが」
その後の夕食には、大工さんが即興で作った箸が登場した。今までも木を削ったものを使ってはいたのだが、あまり「本格的ではなかったので、出来た箸を見てみんな感心した。大工さんは、大物だけではなく、ちょっとした木工細工も得意なようだ。
「家の修理のついでに、小物も色々作ってもらうと助かるかもね」
箸を見ながら生果さんが言った。
「例えばどういうものです?」と僕。
生果さんは少し考えたあと、唸りながら答えた。
「うーん、しゃもじとか木のスプーン。お盆とかお皿とか汁椀とか。木箱なんかもあると便利かもね」
「そう言われてみると色々ありそうですね」
僕がなるほどと感心していると、大工さんが笑って言った。
「そんなに色々出来ねえよ。せめて接着剤でもあれば」
「あ、接着剤なら僕持ってますよ」
聞くと、木工用ボンドと多用途の瞬間接着剤はいつも持ち歩いていたそうだ。
「咄嗟のときに何かと役に立つので」
「そりゃ助かる。まあ、小物は様子を見ながらだな。家の修繕とかそっちの方が先だろ」
「そうだな。いずれにしても大工さんは日中も家で仕事してくれ」
スカウトさんがそう判断したのは正解だと思う。技術を持った人は、なるべくそれに応じた仕事をやってもらうのが効率的であろう。逆に僕や自転車君は、なんでもやりますという姿勢で必要な仕事をするのがベストではなかろうか。
「そういえば、今日自転車君と一緒に森の中を探索したんだが、やはり方位磁石があると助かるな。正確に方角が分かると、迷わずに進める」
話題は変わって、今日の森の探索の話になった。スカウトさんたちは、簡単な手書きの地図を持って探索していたはずだ。探索するたびに書き込みが増え、かなり内容も充実している。それに加え、方位が正確に分かれば確かにスムーズに移動出来るのかもしれない。
「体力には自信あったんですが、結構疲れますね~」
話す内容とは裏腹に、自転車君は僕から見たらまったく疲れてないように見える。
「正直、森を抜けられないわけないじゃん! とタカを括っていたんですが、甘かったです……ありゃ、なかなか無理そうですね」
一日歩き回ってそれを悟ったようだ。そうだろ。今まで僕やスカウトさんが散々歩き回っても、何も見つけられなかったんだから。こんなことで優越感に浸るのも大人気ないが、悪い気持ちはしなかった。
「それでも探索はこれからも続けていかなくちゃならん。人が増えてくれば、ここもだんだん手狭になってくるだろうし」
スカウトさんは真剣な表情でそう言ったあと、一言付け加えた。
「まあ、それはかなり先の話だとは思うが」
その後の夕食には、大工さんが即興で作った箸が登場した。今までも木を削ったものを使ってはいたのだが、あまり「本格的ではなかったので、出来た箸を見てみんな感心した。大工さんは、大物だけではなく、ちょっとした木工細工も得意なようだ。
「家の修理のついでに、小物も色々作ってもらうと助かるかもね」
箸を見ながら生果さんが言った。
「例えばどういうものです?」と僕。
生果さんは少し考えたあと、唸りながら答えた。
「うーん、しゃもじとか木のスプーン。お盆とかお皿とか汁椀とか。木箱なんかもあると便利かもね」
「そう言われてみると色々ありそうですね」
僕がなるほどと感心していると、大工さんが笑って言った。
「そんなに色々出来ねえよ。せめて接着剤でもあれば」
「あ、接着剤なら僕持ってますよ」
聞くと、木工用ボンドと多用途の瞬間接着剤はいつも持ち歩いていたそうだ。
「咄嗟のときに何かと役に立つので」
「そりゃ助かる。まあ、小物は様子を見ながらだな。家の修繕とかそっちの方が先だろ」
「そうだな。いずれにしても大工さんは日中も家で仕事してくれ」
スカウトさんがそう判断したのは正解だと思う。技術を持った人は、なるべくそれに応じた仕事をやってもらうのが効率的であろう。逆に僕や自転車君は、なんでもやりますという姿勢で必要な仕事をするのがベストではなかろうか。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
英雄英雄伝~チート系主人公増えすぎ問題~
偽モスコ先生
ファンタジー
平凡な高校生、森本英雄(もりもとひでお)は突然くじ引きによってチート系主人公の増えすぎた異世界『魔王ランド』に転生させられてしまう。モンスター達の絶滅を防ぐ為、女神ソフィアから全てのチート系主人公討伐をお願いされた英雄は魔王として戦うハメに!?
英雄と魔物と美少女によるドタバタ日常コメディー!
※小説家になろう!様でも掲載中です。進行度は同じですが、投稿時間が違います。
異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜
山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。
息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。
壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。
茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。
そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。
明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。
しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。
仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。
そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界坊主の成り上がり
峯松めだか(旧かぐつち)
ファンタジー
山歩き中の似非坊主が気が付いたら異世界に居た、放っておいても生き残る程度の生存能力の山男、どうやら坊主扱いで布教せよということらしい、そんなこと言うと坊主は皆死んだら異世界か?名前だけで和尚(おしょう)にされた山男の明日はどっちだ?
矢鱈と生物学的に細かいゴブリンの生態がウリです?
本編の方は無事完結したので、後はひたすら番外で肉付けしています。
タイトル変えてみました、
旧題異世界坊主のハーレム話
旧旧題ようこそ異世界 迷い混んだのは坊主でした
「坊主が死んだら異世界でした 仏の威光は異世界でも通用しますか? それはそうとして、ゴブリンの生態が色々エグいのですが…」
迷子な坊主のサバイバル生活 異世界で念仏は使えますか?「旧題・異世界坊主」
ヒロイン其の2のエリスのイメージが有る程度固まったので画像にしてみました、灯に関しては未だしっくり来ていないので・・未公開
因みに、新作も一応準備済みです、良かったら見てやって下さい。
少女は石と旅に出る
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893967766
SF風味なファンタジー、一応この異世界坊主とパラレル的にリンクします
少女は其れでも生き足掻く
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893670055
中世ヨーロッパファンタジー、独立してます
ブロック作成スキルで、もふもふスローライフを目指すことにした
うみ
ファンタジー
もふもふ犬と悪魔少女と共に異世界ジャングルでオートキャンプする!
俺こと日野良介は、異世界のジャングルに転移してしまった。道具も何も持たずに放り出された俺だったが、特殊能力ブロック作成でジャングルの中に安心して住める家を作る。
うっかり拾ってしまった現地人の悪魔っ娘、俺と同時に転移してきたと思われるポチ、喋るの大好き食いしん坊カラスと一緒に、少しずつ手探りで、異世界での生活を充実させていく。
サバイバル生活から楽々スローライフを目指す!
衣食住を充実させるのだ。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる