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責任
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「俺はな、リーダーは健太がやったらいいと思うんだ」
スカウトさんの口から、思っても見なかった言葉がこぼれた。
「えっ!」
あまりの突然の指名に僕は混乱した。どうして僕なんか……
「なぜ僕を、とか思ってるんだろう? 俺はな、健太を高く評価してるんだ。今は仕事が出来ないとか、力がないとか、どっちかというとみんなに蔑んだ目で見られるいじられキャラだが、俺はお前の内面にある素質をしっかりと感じている」
蔑んだ目で見られているという件は流石に言い過ぎのような気もしたが、そんなことを指摘するより、スカウトさんが俺のどこを評価しているのかすごく気になった。
「積極的に進めていくタイプではないかも知れないが、健太が、常にみんなの行動をみて、バランスを考えて動こうとしているのを、俺は感じるんだ。それに時折、いいタイミングで意見を出すところもいいな。ほら、名簿のこととか」
「あれはたまたまです」
「そうだとしても、みんなが考えている以上にお前は頭が回る」
自分にはとてもそんな風には思えないが、スカウトさんは一体何を見ているのだろう?
「それにな。リーダーというのは優秀過ぎてもダメだと思う。一方的に意見を押し付け、ぐいぐい引っ張っていくリーダーは、心強いし、それでうまくいく場合も多いが、必ずどこかで行き詰まる。むしろ、普段からみんなに助けられながら、ここぞという場面で決断してゆくリーダーこそ、どんな危機にも対応していけるんじゃないかな」
いつになく雄弁になったスカウトさんの言葉を、いつしか僕は噛み締めていた。そういうリーダー像が求められるのであれば、確かに僕にも出来るかも知れない。いつのまにかそんな気分になった。
「帰ったら、みんなに提案してみようと思う。もちろん、みんなから大反対にあうようならまた考えなきゃならんがな」
リーダーか……今まで自分がそんな役目を引き受けるなどとは考えもしなかったが、果たして僕に出来るだろうか。さっきはちょっとやってみようか、という気になったが、落ち着いて考えるとすごく難しいことのような気がする。
僕の心配そうな顔を見て、スカウトさんが笑いながら僕の肩を叩いた。
「なあに、大丈夫だ。そう心配するな。健太ならきっと出来る。それに俺だって今まで通り、持ってる知識は出し惜しみせず伝えていくから安心しな!」
思いを吐露してスッキリしたのか、スカウトさんはその後、すっかり上機嫌になったが、僕はそれどころではなく、本当に大丈夫なのだろうかという不安と重い責任を負うプレッシャーで一日中鬱々としていた。
スカウトさんの口から、思っても見なかった言葉がこぼれた。
「えっ!」
あまりの突然の指名に僕は混乱した。どうして僕なんか……
「なぜ僕を、とか思ってるんだろう? 俺はな、健太を高く評価してるんだ。今は仕事が出来ないとか、力がないとか、どっちかというとみんなに蔑んだ目で見られるいじられキャラだが、俺はお前の内面にある素質をしっかりと感じている」
蔑んだ目で見られているという件は流石に言い過ぎのような気もしたが、そんなことを指摘するより、スカウトさんが俺のどこを評価しているのかすごく気になった。
「積極的に進めていくタイプではないかも知れないが、健太が、常にみんなの行動をみて、バランスを考えて動こうとしているのを、俺は感じるんだ。それに時折、いいタイミングで意見を出すところもいいな。ほら、名簿のこととか」
「あれはたまたまです」
「そうだとしても、みんなが考えている以上にお前は頭が回る」
自分にはとてもそんな風には思えないが、スカウトさんは一体何を見ているのだろう?
「それにな。リーダーというのは優秀過ぎてもダメだと思う。一方的に意見を押し付け、ぐいぐい引っ張っていくリーダーは、心強いし、それでうまくいく場合も多いが、必ずどこかで行き詰まる。むしろ、普段からみんなに助けられながら、ここぞという場面で決断してゆくリーダーこそ、どんな危機にも対応していけるんじゃないかな」
いつになく雄弁になったスカウトさんの言葉を、いつしか僕は噛み締めていた。そういうリーダー像が求められるのであれば、確かに僕にも出来るかも知れない。いつのまにかそんな気分になった。
「帰ったら、みんなに提案してみようと思う。もちろん、みんなから大反対にあうようならまた考えなきゃならんがな」
リーダーか……今まで自分がそんな役目を引き受けるなどとは考えもしなかったが、果たして僕に出来るだろうか。さっきはちょっとやってみようか、という気になったが、落ち着いて考えるとすごく難しいことのような気がする。
僕の心配そうな顔を見て、スカウトさんが笑いながら僕の肩を叩いた。
「なあに、大丈夫だ。そう心配するな。健太ならきっと出来る。それに俺だって今まで通り、持ってる知識は出し惜しみせず伝えていくから安心しな!」
思いを吐露してスッキリしたのか、スカウトさんはその後、すっかり上機嫌になったが、僕はそれどころではなく、本当に大丈夫なのだろうかという不安と重い責任を負うプレッシャーで一日中鬱々としていた。
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