30 / 319
雨上がり
しおりを挟む
「最初、四人で迎えに行くのはどうでしょうか?」
「なんで?」と僕。
「もし、女の人なら私が家まで連れていって一緒についていてあげるのがいいんじゃないかと思うんですが…….」
その発想はなかった。やはり女性からの視点でみると、考えるポイントがだいぶ違うようだ。ちょっと感心した。
「なるほど。いい考えかも知れないな」
スカウトさんが少し視線を上に向け、うなずきながら言った。
「でも、一つだけ問題が……」
「何?」と聞いた俺にかぶせるように、釣りキチさんが割って入った。
「ああ、僕なら一人で大丈夫ですよ。釣りしてるだけだし。もう道も分かりましたし、そんなに危険もなさそうですから」
ああ、そういうことか。僕はようやく理解した。桂坂さんが別行動するということは、釣りキチさんが一人になるってことだ。
「いや、それなら健太に釣りキチさんと一緒に行動してもらったほうがいいな。俺は一人でも何も問題ないからな」
確かに、スカウトさんなら一人でも安心だ。僕が釣りキチさんについた方がいいかも知れない。
「僕もそれでいいです」
「じゃ、それで決まりだ。誰が来るかで変わるけどな。食事終えたら、四人で迎えに行くことにしよう」
話がまとまったところで、僕たちは昼食をとった。
振り返ってみれば、今日で僕がここに来てから、丸4日が経つことになる。持ってきた非常食は今のところまだ余裕があるが、確実に減ってきているので、そろそろ心許なくなってきた。
昼食後に外に出ると、既に雨は止んでいた。ゆるやかに吹く風が心地よかった。
「意外と早く止んだな」
いつのまにか横に来ていたスカウトさんが、青いところが見え始めた空を見上げた。
「この分なら、午後はもう雨降らなそうですね。レインコートが邪魔だったので助かります」
「ははは。だいたい、学生なら普段、レインコートなんてあんまり着ないんじゃないか?」
「そうですね。バイクに乗る連中は、普段から来てますけど、僕は乗らないので」
「まあ、若いうちは雨の中、濡れて帰るのもいいさ。それも青春てやつだ」
僕は、いや、普通に傘さして帰ります、と突っ込もうと思ったが、なんとなくタイミングを逃して、ちょっと気まずくなった。
そんなことをしているうちに、午後の出発の時間になった。
「なんで?」と僕。
「もし、女の人なら私が家まで連れていって一緒についていてあげるのがいいんじゃないかと思うんですが…….」
その発想はなかった。やはり女性からの視点でみると、考えるポイントがだいぶ違うようだ。ちょっと感心した。
「なるほど。いい考えかも知れないな」
スカウトさんが少し視線を上に向け、うなずきながら言った。
「でも、一つだけ問題が……」
「何?」と聞いた俺にかぶせるように、釣りキチさんが割って入った。
「ああ、僕なら一人で大丈夫ですよ。釣りしてるだけだし。もう道も分かりましたし、そんなに危険もなさそうですから」
ああ、そういうことか。僕はようやく理解した。桂坂さんが別行動するということは、釣りキチさんが一人になるってことだ。
「いや、それなら健太に釣りキチさんと一緒に行動してもらったほうがいいな。俺は一人でも何も問題ないからな」
確かに、スカウトさんなら一人でも安心だ。僕が釣りキチさんについた方がいいかも知れない。
「僕もそれでいいです」
「じゃ、それで決まりだ。誰が来るかで変わるけどな。食事終えたら、四人で迎えに行くことにしよう」
話がまとまったところで、僕たちは昼食をとった。
振り返ってみれば、今日で僕がここに来てから、丸4日が経つことになる。持ってきた非常食は今のところまだ余裕があるが、確実に減ってきているので、そろそろ心許なくなってきた。
昼食後に外に出ると、既に雨は止んでいた。ゆるやかに吹く風が心地よかった。
「意外と早く止んだな」
いつのまにか横に来ていたスカウトさんが、青いところが見え始めた空を見上げた。
「この分なら、午後はもう雨降らなそうですね。レインコートが邪魔だったので助かります」
「ははは。だいたい、学生なら普段、レインコートなんてあんまり着ないんじゃないか?」
「そうですね。バイクに乗る連中は、普段から来てますけど、僕は乗らないので」
「まあ、若いうちは雨の中、濡れて帰るのもいいさ。それも青春てやつだ」
僕は、いや、普通に傘さして帰ります、と突っ込もうと思ったが、なんとなくタイミングを逃して、ちょっと気まずくなった。
そんなことをしているうちに、午後の出発の時間になった。
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。


ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる