異世界転移物語

月夜

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   翌朝、僕は雨の音で目が覚めた。

「雨が降ってるわよ」

    既に起きていた桂坂さんが教えてくれた。眠い目をこすりながら、外へ出ると
スカウトさんも釣りキチさんももう起きていた。どうやら僕が一番、寝坊助のようだ。

    外を見ると、気持ちのいい雨が降っている。それほど土砂降りというわけではないが、ここに来てから初めての本格的な雨が降っていた。

「雨水はなるべく貯めておこう」

    スカウトさんがみんなに指示を出した。僕らは手当たり次第、容器として使えそうなものを探してくると、雨水を受けた。

「この家、古いですけど、雨漏りとか大丈夫ですかね?」

    釣りキチさんが尋ねる。

「今のところ、大丈夫みたいだけど」

   桂坂さんが家の中を覗きながら答える。

「それにしても、なんか気持ちいいですね」

    僕はこの雨の中に飛び出て、全身にシャワーを浴びたい衝動に駆られた。

「ははは。そうだな。健太、今にも飛び出たさそうだな」

   スカウトさんには全部お見通しだ。

「そういえば、ここに来てお風呂入ってないですもんね」

   桂坂さんが悲しそうな顔をする。男性はともかく、女性は入浴出来ないというのは大問題であろう。まだ、3日目はいえ、その点はストレスになっているのかも知れない。

「もう少し暖かかければ、水浴びしたり、湖で泳いだりってことも出来るかもしれないですね」

    僕は実感を述べる。流石に今の気温では、やや厳しい感じがする。

「午前中はどんな動きをしますか?」

僕はスカウトさんに尋ねた。

「そうだな。雨の具合が分からないが、この感じだと午前中はずっと雨かなあ」

「そうですね」

「そういえば、みんな傘とかレインコートとか持ってきてるか?」

   スカウトさんはみんなの顔を見渡した。

「僕は非常用の簡易的なレインコートは持ってます」

    僕は非常用持ち出し袋の中にレインコートを入れていたのを思い出した。

「私は傘もレインコートもないわ」

    桂坂さんは買い物中だったから、雨が降りそうな天気でなければ、持っていなくて当然だろう。

「僕もないです」と釣りキチさん。

「俺は持ってるから、そうすると雨の中で動けるのは二人ってことか……。よし、こうしよう」

   スカウトさんは両拳を打った。

「俺と健太でルートの捜索。優子ちゃんと釣りキチ君は、家の中を整理してくれ。使えそうなものがないか探してみて、使いやすそうにまとめておけば、色々助かる。余裕があれば他の家も見て回って、道具とか持ってきてもいいと思う」
   
   特に反対意見はなく、午前中はそのように動くことに決まった。
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