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■第一章 七王国の王
ヘルマス編 第一話「浮上」
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第一話「浮上」
ニューン、と意識が浮上し目の前には見たこともない世界が広がっていた。
「ふぅ~」
吹き荒れる風は、春の音を奏でてはおらず。
颯爽と生い茂る林は自然の色を感じさせなかった。
目の前に広がるのはどこまでも続く枯れた台地。
曰く、自分生まれ落ちた異世界の姿だ。
そして、次の瞬間情報が雪崩のように流れ込んでくる。
「俺の名前はヘルマス。
ヘルマス・ネクロヴァール
幼くに母を亡くし、
父と二人でひっそりと小屋で暮らしている魔族」
不思議な感覚だ。
自分は体験していないはずなのに、急に記憶が刻まれた。
まるで、体の記憶を魂に流し込むような、そんなイメージ。
あまりの情報量についていけず、俺はしばらくその場で呆然と立ち尽くした。
そして使命感が遅れてやってくる。
王にならなくてはいけない、と。
続けて、足音が近づいてくる。
「おーい
どうしたんだ?
そんなところでボーっとして
もしかして、具合でも悪いのか?」
俺の異変に気付いて慌てて駆けてきたのは老けた男性。
もとい、俺の父だ。
「ああ、
大丈夫。
たぶん立ち眩み」
「そうなのか?
ならいいけど
無茶はするもんじゃないからな」
「わあってる
それと、
一つ言いたいことが……」
「なんだ?」
「俺、
ちょっくら
国作ってくる」
「は?」
父は驚いた顔でこちらを見つめている。
唖然、という言葉がお似合いで、怒りすら湧きあがっているように見える。
そりゃそうだ、いきなり息子がそんな無鉄砲ことを言い出したんだから、
小言の一つや二つぶつけたくなるだろう。
俺だったら、「何言ってんだコイツ」って無視する。
「ヘルマス?
一体何を言ってるんだ?
そんな大それたこと一体どうやって――」
「俺にもよくわかんねぇんだけど
なんかできる気がするんだよ……
いや、できるって確信があるんだ」
そう言いながら、俺の中になぜか湧き上がる自信があった。
知恵も力も富も名誉も人脈も何一つない。
根拠のない自信だけがこの身に宿っていた。
父は顔を青くし、目を伏せる。
言葉に詰まった様子だ。
その表情は、断念。
そして、ほんの少しの拒絶だった。
その感情。
体中からふつふつと漏れ出すその感情が、ついには口から解き放たれる。
「はぁあ
馬鹿だな」
「だろ?」
「……」
俺のその態度は開き直りに近かったのかもしれない。
その言葉は父を困らせたようだった。
父は大きなため息を盛大にぶちまける。
足を抱えてその場にへたり込んでしまう。
「……好きにしろ。
ただし、無茶だけはするな。
約束してくれ、必ず帰ってくる、と。
俺にはお前しかいないんだからな」
「オーケーオーケー」
「真面目に聞いてるのか?」
にやりと笑った口の合間に、ギラッと煌めく前歯がチラリ。
父が被った強がりという名のお面は脆く、今にも崩れてしまいそうだった。
「じゃ
行ってくる」
こうして俺の、異世界での国作りが始まった。
どこに向かえばいいのかもわからないが、不思議と恐怖はなかった。
ただ、自分の足で進めばいい。
ピョンっと飛び上がり、俺は拳を突き上げると
「世界の王に
なってやる!!」
拳を突き上げ大声で叫んだ。
枯れた大地を踏みしめながら、俺はただひたすらに未来を見据えた。
ヘルマス・ネクロヴァール――魔族の王としての一歩が、ここに刻まれる。
ニューン、と意識が浮上し目の前には見たこともない世界が広がっていた。
「ふぅ~」
吹き荒れる風は、春の音を奏でてはおらず。
颯爽と生い茂る林は自然の色を感じさせなかった。
目の前に広がるのはどこまでも続く枯れた台地。
曰く、自分生まれ落ちた異世界の姿だ。
そして、次の瞬間情報が雪崩のように流れ込んでくる。
「俺の名前はヘルマス。
ヘルマス・ネクロヴァール
幼くに母を亡くし、
父と二人でひっそりと小屋で暮らしている魔族」
不思議な感覚だ。
自分は体験していないはずなのに、急に記憶が刻まれた。
まるで、体の記憶を魂に流し込むような、そんなイメージ。
あまりの情報量についていけず、俺はしばらくその場で呆然と立ち尽くした。
そして使命感が遅れてやってくる。
王にならなくてはいけない、と。
続けて、足音が近づいてくる。
「おーい
どうしたんだ?
そんなところでボーっとして
もしかして、具合でも悪いのか?」
俺の異変に気付いて慌てて駆けてきたのは老けた男性。
もとい、俺の父だ。
「ああ、
大丈夫。
たぶん立ち眩み」
「そうなのか?
ならいいけど
無茶はするもんじゃないからな」
「わあってる
それと、
一つ言いたいことが……」
「なんだ?」
「俺、
ちょっくら
国作ってくる」
「は?」
父は驚いた顔でこちらを見つめている。
唖然、という言葉がお似合いで、怒りすら湧きあがっているように見える。
そりゃそうだ、いきなり息子がそんな無鉄砲ことを言い出したんだから、
小言の一つや二つぶつけたくなるだろう。
俺だったら、「何言ってんだコイツ」って無視する。
「ヘルマス?
一体何を言ってるんだ?
そんな大それたこと一体どうやって――」
「俺にもよくわかんねぇんだけど
なんかできる気がするんだよ……
いや、できるって確信があるんだ」
そう言いながら、俺の中になぜか湧き上がる自信があった。
知恵も力も富も名誉も人脈も何一つない。
根拠のない自信だけがこの身に宿っていた。
父は顔を青くし、目を伏せる。
言葉に詰まった様子だ。
その表情は、断念。
そして、ほんの少しの拒絶だった。
その感情。
体中からふつふつと漏れ出すその感情が、ついには口から解き放たれる。
「はぁあ
馬鹿だな」
「だろ?」
「……」
俺のその態度は開き直りに近かったのかもしれない。
その言葉は父を困らせたようだった。
父は大きなため息を盛大にぶちまける。
足を抱えてその場にへたり込んでしまう。
「……好きにしろ。
ただし、無茶だけはするな。
約束してくれ、必ず帰ってくる、と。
俺にはお前しかいないんだからな」
「オーケーオーケー」
「真面目に聞いてるのか?」
にやりと笑った口の合間に、ギラッと煌めく前歯がチラリ。
父が被った強がりという名のお面は脆く、今にも崩れてしまいそうだった。
「じゃ
行ってくる」
こうして俺の、異世界での国作りが始まった。
どこに向かえばいいのかもわからないが、不思議と恐怖はなかった。
ただ、自分の足で進めばいい。
ピョンっと飛び上がり、俺は拳を突き上げると
「世界の王に
なってやる!!」
拳を突き上げ大声で叫んだ。
枯れた大地を踏みしめながら、俺はただひたすらに未来を見据えた。
ヘルマス・ネクロヴァール――魔族の王としての一歩が、ここに刻まれる。
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