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■第1章 |自動人形《ロボ》に育てられた|闇耳長族《ダークエルフ》
✦第3話「少女は旅に出る」
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✦第3話「少女は旅に出る」
「ロボター……
ボックス……」
私は木陰のベンチで泣いている。
あんなことがあったのに、世界はいつも通り朝を迎えた。
私は昨日のことを思い出す。
もしかしたら、あの轟音は電波かなにかだったんじゃないかな。
機械が全部やられちゃっているし。
そして、ピかッと光った方向はなんとなくだけど神樹大陸方面だということもわかった。
機械が何らかの原因で故障したのなら直せるハズだけど、私にはそんな技術はない。
万が一部品をこれ以上壊してしまったら、直せなくなってしまう。
「会いたいよ
ロボター……
ボックス……
……うぇーん」
私は泣いた。
★ ★ ★
昼過ぎ。
私は顔を真っ赤に腫らしして、立ち上がった。
少しは落ち着きを取り戻してはきているものの、まだ涙が溢れてくる。
しかし、時間は無情に進む。
気づけばお腹がなっていた。
いつの間にか、お昼ご飯の時間になっていた。
「……食べ物さがさなきゃ……」
私に手にはライフルが一丁。
視線の先にはイノシシが一匹。
重いライフルを両手で支え、標準を合わせる。
一発目を打つ。
が、外した。
衝撃で後ろに倒れこんだ。
けれど、もう手を差し伸べてくれる人はいない。
イノシシが驚いて森の方へ走っていく。
怖い。引き金一つであのイノシシの体に穴が開く。
私の人差し指に一つの命が乗っかっている。
そんな事実に頭が追い付いていない。
でもそういえば――。
私が思い出したのは、ロボターの言葉だ。
『他の命を奪わなきゃ、命は生きていけない。
この世界は残酷なの……』
確かそんなことを言っていた気がする
そうだ。確かにそうだ。
私は毎日動物の肉を食べているし、その動物は野菜を食べている。
いい獲物がかかった時は喜ぶし、逆になにもめぼしいものが取れていなかったら落胆する。
この世界は誰かの不幸の上に誰かの幸せが成り立っている。
この世界は残酷だ。
そうわかると、銃の引き金が軽くなったような気がした。
もう一つロボターの言葉を思い出した。
『でもあなたならできるはず。
あなたは強い子だから』
私は生まれてこの方、自分が強いなんて思ったことは無い。
でも、信じようと思った。
私を愛してくれた母の言葉を……。
次の瞬間、あたりに爆発音が響いた。
動かなくなったイノシシをみて思う。
ロボターもこんな風に動かなくなっていたな、と。
ロボターもこのイノシシも壊れて動かなくなったという点では同じだ。
どうしても、ロボターとイノシシを重ねてしまう。
私は、これから――――の腹を……斬って
下処理をしなければならない。
私はナイフを取り出す。
ざっくりと腹を切る。
内臓が転がり出てくる。
「ウプッ」
吐きそう。
お腹はすっからかんなのだが。
何もかも吐いてすっきりしたい。
「ごめんなさい
ごめんなさい」
私は謝りながら、イノシシの内臓を取り除いた。
★ ★ ★
肉だけになったイノシシを焚火で焼く。
しばらくすると、いい匂いがあたりを包み込んだ。
ガブリとかぶりつく。
「おいしい
おいしいよぉう」
私は気が付く。
この命は、私の命となってこれからも生きていくのだと。
魂は廻り続けるのだと。
★ ★ ★
数か月後。
ロボターとボックスを木陰のベンチへと運んだ。
毛皮のコートを被せて、そして挨拶をしに来た。
最後の挨拶だ。
「ロボター! ボックス!
必ず直して見せるから
待ってて!
行ってきます!」
動かなくなった二人と指切りげんまんをした。
絶対に直して見せる、と。
少女は旅に出た。
神樹大陸へ。
少女は歩く。
白い息を吐きながら。
――この世界の真実を知るために
「ロボター……
ボックス……」
私は木陰のベンチで泣いている。
あんなことがあったのに、世界はいつも通り朝を迎えた。
私は昨日のことを思い出す。
もしかしたら、あの轟音は電波かなにかだったんじゃないかな。
機械が全部やられちゃっているし。
そして、ピかッと光った方向はなんとなくだけど神樹大陸方面だということもわかった。
機械が何らかの原因で故障したのなら直せるハズだけど、私にはそんな技術はない。
万が一部品をこれ以上壊してしまったら、直せなくなってしまう。
「会いたいよ
ロボター……
ボックス……
……うぇーん」
私は泣いた。
★ ★ ★
昼過ぎ。
私は顔を真っ赤に腫らしして、立ち上がった。
少しは落ち着きを取り戻してはきているものの、まだ涙が溢れてくる。
しかし、時間は無情に進む。
気づけばお腹がなっていた。
いつの間にか、お昼ご飯の時間になっていた。
「……食べ物さがさなきゃ……」
私に手にはライフルが一丁。
視線の先にはイノシシが一匹。
重いライフルを両手で支え、標準を合わせる。
一発目を打つ。
が、外した。
衝撃で後ろに倒れこんだ。
けれど、もう手を差し伸べてくれる人はいない。
イノシシが驚いて森の方へ走っていく。
怖い。引き金一つであのイノシシの体に穴が開く。
私の人差し指に一つの命が乗っかっている。
そんな事実に頭が追い付いていない。
でもそういえば――。
私が思い出したのは、ロボターの言葉だ。
『他の命を奪わなきゃ、命は生きていけない。
この世界は残酷なの……』
確かそんなことを言っていた気がする
そうだ。確かにそうだ。
私は毎日動物の肉を食べているし、その動物は野菜を食べている。
いい獲物がかかった時は喜ぶし、逆になにもめぼしいものが取れていなかったら落胆する。
この世界は誰かの不幸の上に誰かの幸せが成り立っている。
この世界は残酷だ。
そうわかると、銃の引き金が軽くなったような気がした。
もう一つロボターの言葉を思い出した。
『でもあなたならできるはず。
あなたは強い子だから』
私は生まれてこの方、自分が強いなんて思ったことは無い。
でも、信じようと思った。
私を愛してくれた母の言葉を……。
次の瞬間、あたりに爆発音が響いた。
動かなくなったイノシシをみて思う。
ロボターもこんな風に動かなくなっていたな、と。
ロボターもこのイノシシも壊れて動かなくなったという点では同じだ。
どうしても、ロボターとイノシシを重ねてしまう。
私は、これから――――の腹を……斬って
下処理をしなければならない。
私はナイフを取り出す。
ざっくりと腹を切る。
内臓が転がり出てくる。
「ウプッ」
吐きそう。
お腹はすっからかんなのだが。
何もかも吐いてすっきりしたい。
「ごめんなさい
ごめんなさい」
私は謝りながら、イノシシの内臓を取り除いた。
★ ★ ★
肉だけになったイノシシを焚火で焼く。
しばらくすると、いい匂いがあたりを包み込んだ。
ガブリとかぶりつく。
「おいしい
おいしいよぉう」
私は気が付く。
この命は、私の命となってこれからも生きていくのだと。
魂は廻り続けるのだと。
★ ★ ★
数か月後。
ロボターとボックスを木陰のベンチへと運んだ。
毛皮のコートを被せて、そして挨拶をしに来た。
最後の挨拶だ。
「ロボター! ボックス!
必ず直して見せるから
待ってて!
行ってきます!」
動かなくなった二人と指切りげんまんをした。
絶対に直して見せる、と。
少女は旅に出た。
神樹大陸へ。
少女は歩く。
白い息を吐きながら。
――この世界の真実を知るために
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