あなたのおかげで愛を知りました

岡本梨紅

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「……は?」

抱く。

この年になれば、ただ抱きしめるハグを意味していることではないことくらいは分かる。
寝室で行われる夜の営み。
つまり……。

「カシーと、セックスができるか……ということで良いですか」
「……まあ、そういうことだ」

父親が、ごほんと咳払いをしながら言った。

「できます」

(いや……違う……)

「カシーとじゃなければ、したくありません」

俺は、即答した。
男は性的な象徴を、女の体の中に入れる。
そして自分の中で育てた種を女の腹に放つことで、子供ができる。
王位継承権を得たあとすぐに得た知識。
その行為が具体的にどんなものか、想像するしかできなかったが、少なくとも俺にとって、自分の体が入る女はカシー以外、想像できなかった。

実際今も、ついこの間会った時のカシーを思い出す。
元々顔立ちが綺麗だと思っていたけど、見違えるように、肌も髪も輝いているように見えた、
胸も育ち、顔を見ようとすると谷間が見えてしまい、つい目をそらしてしまうほど。
何より、カシーから漂う香りを嗅ぐだけで、身体中力が湧き上がる程。
思い出しただけで、自分の性器に力が湧いてきてしまう。

「そうか。それならば……問題はない」
「何が問題ないんですか!先ほど王女と子供を作れと言いましたよね!」

つまり、王女とセックスをしろ、ということではないのか。

「いや。王女とは絶対にセックスするな」
「……は?」
「王女には、お前の子供は産ませるが、お前の性器を王女の体の中には入れてはならぬ」
「言ってることに、矛盾していませんか!?」
「お前と王女の子供は、体外受精させて、別の女に産ませる」

体外受精。
白い種と卵を、人工的に結びつける手法で、子供が欲しくてもなかなか出来ないカップルが行う医術的解決法だと聞く。
でもそれは、あくまで伝統的な手法では出来なかった場合に行われることが多いとも聞く。

次から次へと、王から出てくる言葉の意味を追いかけることに、俺は今までにないくらい必死だった。
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