逢魔が時、黄昏神社で逢いましょう

岡本梨紅

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「でも、このあいだ、いもうとがうまれたんです」
「ほう。それはそれは」

 夕月はめでたいことだと言いそうになって、口をつぐんだ。自分よおり幼い守るべき存在ができたことに悩んでいる優花に、言うべき言葉ではないと思ったからだ。

「さいしょは、いもうとができたこと、うれしかったんです。だってわたしはおねえちゃんになったってことだから。だけどいもうとがうまれてから、ママも新しいパパも、いもうとにつきっきりで……。まわりの人はまた、わたしのことを『いつもひとりで。かわいそうな子』だって」

 ついに優花は黙ってしまいました。
 夕月は優花の思いを知り、悲しみと同情が入り交じった表情を浮かべます。

「優花さんは、さみしいのですね」
「……うん。でも、おねえちゃんになったから、がまんしなきゃ」
「それはご両親が、パパさんとママさんが言ったのですか?」

 優花は首をぶんぶんと、首を横に振る。

「ママとパパは、そんなこと言わない。でも、ふたりとも、すごくたいへんそうだから。わたしはあそんでほしくても、ほめてもらいたくても、がまんするの。がまんはなれてるもん……」

 泣きそうな声でつぶやく優花の頭を、夕月は優しく撫でました。

「優花さん。たしかに、時には我慢をすることは、大切です。でも、我慢し続けるのは、よくありません」

 夕月の言葉に、優花は顔をあげました。

「我慢をし続けると、いざという時に、自分の意見を言えなくなってしまいます。意見を言わないということは、それで満足していると思われてしまうのです」
「うん……」
「せっかく意見を言えるお口があるのですから、自分の考えは、口に出してみましょう」

 優花は夕月の言うことは理解できるのか、頷きはするものの、納得はしていないようでした。
 それでも、夕月は話を続けます。
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