逢魔が時、黄昏神社で逢いましょう

岡本梨紅

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「優花さんは、なにか悩みがあるから、この神社を訪れ、お賽銭を投げたんですよね?」
「……ここは、なやみをきいてくれる、神社なんですか?」

 優花の問いかけに、夕月は微笑む。

「優花さんは、こんな話を聞いたことありませんか?
 昼から夜へと変わる逢魔が時。悩みを抱えて歩いていると、狐の神様を祀っている黄昏神社にたどりつく。そこで、お賽銭を投げ入れると、狐の神様が現れて、悩みを聞いてくれる。
 というお話なんですが」
「お兄さん、きつねの神さまなんですか?」
「ふふっ。どうでしょう」

 いたずらっぽく笑う夕月に、優花はむぅっと頬を膨らませました。

「まぁ、僕が狐の神様かどうかは、横に置いといて。
 悩み事があるなら、話してみませんか? 見ず知らずの相手だからこそ、話せることってあると思うんです」

「でも、わたしのなやみは、わたしのわがままだから……」

 優花は俯いてしまいました。
 夕月は優花と目線を合わせるように、その場にしゃがみました。

「優花さん。この黄昏神社に来るには、条件があるんです」
「じょうけん?」

 優花の問いかけに、夕月は頷いて答えます。

「その条件とは、『一人ではどうしようもない、大きな悩みを抱えている』ということです」
「大きな、なやみ……」
「はい。優花さんがここに来たのも、ご縁ですから」

 優花は言いにくそうに、体をもじもじとさせます。

「おこりませんか?」
「もちろんです。人の悩みを聞くのが、僕のお勤めですから。どうぞ、そこの社殿の階段にでも座ってください」

 夕月に促され、優花は階段に座ります。しかしうつむいたまま、口を開きません。
 夕月は優花を急かすようなことはせず、のんびりと彼女が話し出すのを待ちます。

「わたしね、かわいそうな子なんだって」

 優花がやっと口を開きました。
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