逢魔が時。それは人と人ならざるモノたちが出逢う時

岡本梨紅

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電話ボックス

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 美代は電話にしがみつくようにして、受話器を震える手で持ち、目をつぶって叫んだ。

「お願い! あいつを、星宮愛華を消して! やつの存在を、なかったことにして!!」
『承りました』

 ガチャ。ツーツーツー。

 いつものように通話が切れる。それと同時に、愛華の叫び声が消えた。
 美代はこわごわと目を開いた。そこには、先ほどまで愛華が握っていたカッターが、地面に突き刺さっていた。

「はぁはぁはぁ」

    美代は受話器を持ったまま、ズルズルとその場に座り込む。

(終わった……んだよね?   星宮愛華を、消せたんだよね?   私の本当の願い、叶えられたんだ)

    美代は深く息を吐き出した。

「これで、よかったんだよね……?」
『料金のお支払いを、お願いします』
「え?」

    受話器から、機械的な声が聞こえる。

『料金のお支払いを、お願いします』

    スピーカーから再び同じ言葉が、繰り返される。

「料金って、今までそんなこと……。そもそもお金入れるとこないじゃない」
『ご利用、ありがとうございました』
「は?」

    美代は目をまたたく。その途端とたん、受話器から煙がき出した。

「きゃあ!」

    美代は受話器を投げ出す。しかし、煙は止まることなく出続ける。
    美代は電話ボックスから出ようと、立ち上がって扉を押す。しかし、扉はビクともしない。

「なんで!?     なんで開かないの!?」

    美代はドアを押したり、引いたりとガチャガチャいじる。それでも扉は開かない。
    煙は電話ボックスの中に充満する。美代は恐怖のあまり、パニックにおちいった。

「い、いや!    お願い!    誰か助けて!!」

    ドアを叩いて助けを求めるが、夕暮れの公園には人はおらず、ましてや茂みの中にわざわざ入ってくる人物なんて、いるわけもない。

「おね、がい。たすけ……て」

    美代はだんだんと、意識が遠のいていくのに抵抗できず、膝から崩れ落ちた。
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