逢魔が時。それは人と人ならざるモノたちが出逢う時

岡本梨紅

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電話ボックス

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 部活が終わり、美代は勝也と共に帰路についていた。

「あのさ、山路ちゃん」
「はい」
「星宮の前で言ったこと、本当だから。山路ちゃんのことが好きって気持ち」

 美代は思わず足を止める。勝也もつられて足を止めた。

「……私は愛華先輩の言う通り、勝也先輩のそばにいたくて、マネージャーになったんです」
「じゃあ、山路ちゃんは俺のどこを好きになってくれたわけ?」

 美代は勝也のバスケをしている姿を、思い浮かべる。
 試合中の「絶対に勝つ」という強い意志を持った表情に、ボールを片手に縦横無尽にコートを走る姿。シュートを決めたときの笑顔。
 美代はバスケをしている勝也が大好きだった。だから、正直に話すことにした。

「バスケを」
「ん?」
「バスケを、してる姿が、好きなんです。試合のときの真剣さに、チームメイトみんなを引っ張っていく姿に、憧れたんです。だから、少しでも勝也先輩が楽しくバスケできるように、支えたいって思って。それでちょっとだけ近くでバスケしてる姿を」
「あーあーあー! ちょ、ちょっと待って!」
「え?」

    美代が顔をあげると、勝也は顔を真っ赤にして、慌てていた。
    勝也はチラリと美代に視線をやる。美代は不思議そうに首を傾げていた。

(マジか。見た目とか頭の良さで寄ってくる子が多かったけど、バスケ姿が好きって言ってくれた子は初めてだ)
「勝也先輩?」

(俺はガキの頃からずっとバスケをやってた。でも、みんなそのバスケを否定してきた。そんなんだったら、彼女なんてほしくねぇって思ってたけど、この子は違う。俺のバスケをしてる姿を、見てくれた)

 勝也は大きく深呼吸をして、美代と向き合う。

「山路ちゃん。いや、美代ちゃん。俺は、俺のバスケを応援してくれる美代ちゃんが好きです。俺と付き合ってくれませんか?」

 ボンッと音がでたと錯覚さっかくするほど、美代の顔が一瞬でりんごのように真っ赤になった。

(うそ、うそうそうそ! え? これ、夢じゃないよね!? わ、私、勝也先輩に告白されてる!?)

 右往左往うおうさおうしていた美代だが、勝也を見上げ、小さく頭を下げた。

「よ、よろしく、お願いします」
「ありがとうございます! 美代ちゃん!」
「わっ!」

   勝也はギュッと美代を抱きしめた。美代は驚いたものの、おそるおそる勝也の背中に手を回して抱きついた。
 しばらく抱き合っていたが、勝也が腕の力を緩めたので、美代もそっと腕を離した。

「……いつまでも抱きしめていたいけど、あんまり遅くなるといけないから、帰ろうか」
「はい……」

  美代が残念そうにすると、勝也は美代の手を握った。

「これからは一緒にいられるんだからさ」
「そう、ですね。はい。帰りましょう」

 二人は仲良く手をつないで帰った。
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