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電話ボックス

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   翌日。放課後練習しかなかったその日は、愛華の姿がなかった。

(まさかね)
「あ、山路ちゃん。お疲れ」
「勝也先輩。お疲れ様です。あの愛華先輩は?」
「その事なんだけど、あいつ体育の授業中に手を痛めたらしくってさ」

   勝也の言葉に、美代はドキッとする。愛華が手をケガするように、昨日電話ボックスに願った通りになったからだ。

「本人は部活に出るって言って聞かなかったけど、来ても仕事出来ないから、休ませたんだよ」
「そう、ですか。ケガ、ひどくないといいですけど」

   美代は自分の顔が引きつっていないかと思いながらも、愛華の心配をしているように見せた。勝也がなにも言わないので、うまく演技は出来ているのだろう。

「それで、今日は山路ちゃん一人で仕事してもらうことになっちゃうんだけど」
「あ。大丈夫です。やることは全部、わかっているので」
「山路ちゃん、優秀だもんね。でもキツかったら、誰かに声をかけて助けてもらってね。もちろん、俺も手助けするから」
「ありがとうございます!」

   美代は勝也に頭を下げて、仕事に取り掛かった。

   仕事はたしかに大変だった。普段は愛華と分担してやっていることを、一人でこなさなければならないからだ。
 しかし、愛華がいない分、男子たちが美代の仕事を手伝ってくれた。美代は純粋にうれしいと思うと同時に、こう思った。

(愛華先輩は、いつもみんなに、こうやってちやほやされていたんだ。それじゃあ誰かにこの立場を取られたくないよね)

   美代は電話ボックスの力を少し信じることにした。

   練習が終わり、片付けをしようとすると、勝也に呼ばれた。

「どうしました?」
「今日は、最後の片付けはいいから一緒に帰ろうよ」
「え?    でも……」
「いいからいいから。おまえら、あとよろしく。お疲れ~」
「お、お疲れ様です!」

   勝也に半ば無理やり連れ出されながら、美代は体育館にいた部活メンバーに、声を投げかけた。

「お疲れ~」
「お疲れ、山路ちゃん。気をつけて帰んなよ~」

   片付けをしていた人たちは、快く美代と勝也を送り出した。
 そして美代は、勝也に荷物を取って来るよう言われ、一緒に帰ることになった。
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