28 / 38
電話ボックス
15
しおりを挟む
あれから、美代は愛華に監視されるようになり、勝也とも距離を取ることにした。
勝也に理由を問われても、答えられるはずもなく、適当に誤魔化した。その度に勝也が悲しそうな顔をするので、美代は胸が痛かった。
日曜日。その日は部活が早上がりの日だった。一人、家までの道を歩いていた時、ふと美代は電話ボックスのことを思い出した。
(あの電話ボックスって、まだあるのかな?)
「もちろんありますとも」
「きゃ!」
耳元で囁やかれた声に、美代は飛び上がった。
「おっと。驚かせてしまったようで、申し訳ありません」
「あなたは、あの時の」
美代の背後にいたのは、美代に願いを叶える電話ボックスの存在を教えた黒スーツの男だった。
「電話ボックスは以前と同じ場所にありますよ。あれはこの世のものではありませんから」
「え?」
「ところで、あなたはまだ本当に叶えたい願いを、お願いしていないようですね」
男が薄目を開ける。
「このままでは、あなたの身に危険が及ぶかも知れません。危険因子は、早めに取り除いたほうが良いですよ?」
「それって……」
男の言葉は、まるで愛華が美代に何かをしようと計画しているように聞こえた。
「さぁさぁ、お急ぎを。あれは黄昏時にしかありませんからね」
男に急かされ、美代は公園にある電話ボックスへと走った。走り去る美代を、男はにっこりとした笑みで見送った。
公園にたどり着いた美代は、迷わず電話ボックスへと辿りついた。電話ボックスは変わらず、ポツンとそこにあった。
美代は中に入り、受話器を取る。だが、そこで何を願えばいいのかわからなくなった。
「どうしよう……」
迷った末、美代は受話器を耳に当てる。
「明日、星宮愛華が手を痛めて部活に来ませんように」
『ピーッ。承りました』
ガチャ。ツーツーツー。
「これで……よかったんだよね……」
美代は受話器を置いて、フラフラと家に帰った。
勝也に理由を問われても、答えられるはずもなく、適当に誤魔化した。その度に勝也が悲しそうな顔をするので、美代は胸が痛かった。
日曜日。その日は部活が早上がりの日だった。一人、家までの道を歩いていた時、ふと美代は電話ボックスのことを思い出した。
(あの電話ボックスって、まだあるのかな?)
「もちろんありますとも」
「きゃ!」
耳元で囁やかれた声に、美代は飛び上がった。
「おっと。驚かせてしまったようで、申し訳ありません」
「あなたは、あの時の」
美代の背後にいたのは、美代に願いを叶える電話ボックスの存在を教えた黒スーツの男だった。
「電話ボックスは以前と同じ場所にありますよ。あれはこの世のものではありませんから」
「え?」
「ところで、あなたはまだ本当に叶えたい願いを、お願いしていないようですね」
男が薄目を開ける。
「このままでは、あなたの身に危険が及ぶかも知れません。危険因子は、早めに取り除いたほうが良いですよ?」
「それって……」
男の言葉は、まるで愛華が美代に何かをしようと計画しているように聞こえた。
「さぁさぁ、お急ぎを。あれは黄昏時にしかありませんからね」
男に急かされ、美代は公園にある電話ボックスへと走った。走り去る美代を、男はにっこりとした笑みで見送った。
公園にたどり着いた美代は、迷わず電話ボックスへと辿りついた。電話ボックスは変わらず、ポツンとそこにあった。
美代は中に入り、受話器を取る。だが、そこで何を願えばいいのかわからなくなった。
「どうしよう……」
迷った末、美代は受話器を耳に当てる。
「明日、星宮愛華が手を痛めて部活に来ませんように」
『ピーッ。承りました』
ガチャ。ツーツーツー。
「これで……よかったんだよね……」
美代は受話器を置いて、フラフラと家に帰った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
御院家さんがゆく‼︎
涼寺みすゞ
ホラー
顔はいい、性格もたぶん。
でも何故か「面白くない」とフラれる善法の前に、ひとりの美少女が現れた。
浮世離れした言動に影のある生い立ち、彼女は密教の隠された『闇』と呼ばれる存在だった。
「秘密を教える――密教って、密か事なんよ? 」
「普段はあり得ないことが バタン、バタン、と重なって妙なことになるのも因縁なのかなぁ? 」
出逢ったのは因縁か? 偶然か?
代償
とろろ
ホラー
山下一郎は、どこにでもいる平凡な工員だった。
彼の唯一の趣味は、古い骨董品店の中を見て回ること。
ある日、彼は謎の本をその店で手に入れる。
それは、望むものなら何でも手に入れることができる本だった。
その本が、導く先にあるものとは...!
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
【完結】知られてはいけない
ひなこ
ホラー
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。
他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。
登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。
勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。
一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか?
心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。
(第二回きずな文学賞で奨励賞受賞)
不労の家
千年砂漠
ホラー
高校を卒業したばかりの隆志は母を急な病で亡くした数日後、訳も分からず母に連れられて夜逃げして以来八年間全く会わなかった父も亡くし、父の実家の世久家を継ぐことになった。
世久家はかなりの資産家で、古くから続く名家だったが、当主には絶対守らなければならない奇妙なしきたりがあった。
それは「一生働かないこと」。
世久の家には富をもたらす神が住んでおり、その神との約束で代々の世久家の当主は働かずに暮らしていた。
初めは戸惑っていた隆志も裕福に暮らせる楽しさを覚え、昔一年だけこの土地に住んでいたときの同級生と遊び回っていたが、やがて恐ろしい出来事が隆志の周りで起こり始める。
経済的に豊かであっても、心まで満たされるとは限らない。
望んでもいないのに生まれたときから背負わされた宿命に、流されるか。抗うか。
彼の最後の選択を見て欲しい。
二人称・短編ホラー小説集 『あなた』
シルヴァ・レイシオン
ホラー
普通の小説に読み飽きたそこの『あなた』
そんな『あなた』にオススメします、二人称と言う「没入感」+ホラーの旋律にて、是非、戦慄してみて下さい・・・・・・
※このシリーズ、短編ホラー・二人称小説『あなた』は、色んな"視点"のホラーを書きます。
様々な「死」「痛み」「苦しみ」「悲しみ」「因果」などを描きますので本当に苦手な方、なんらかのトラウマ、偏見などがある人はご遠慮下さい。
小説としては珍しい「二人称」視点をベースにしていきますので、例えば洗脳されやすいような方もご観覧注意、願います。
パラサイト/ブランク
羊原ユウ
ホラー
舞台は200X年の日本。寄生生物(パラサイト)という未知の存在が日常に潜む宵ヶ沼市。地元の中学校に通う少年、坂咲青はある日同じクラスメイトの黒河朱莉に夜の旧校舎に呼び出されるのだが、そこで彼を待っていたのはパラサイトに変貌した朱莉の姿だった…。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる