逢魔が時。それは人と人ならざるモノたちが出逢う時

岡本梨紅

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電話ボックス

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「勝也先輩!」

 放課後、美代は部活が始まる前に勝也に走り寄った。

「ん? どしたの?」
「今日、数学の小テスト、満点取れたんです!」
「マジ? 朝、苦手って言ってたのに、すげーじゃん!」

 勝也は美代の髪型が崩れない程度に、頭を撫でてやる。それに美代は顔を真っ赤にした。

「わ、私、準備してきます!!」

 美代は照れた顔を隠すように、勝也の前から走って逃げだした。
 一方、勝也も美代の照れ顔を見て、頬をうっすらと赤くし、頬をポリポリとかく。

(今の山路ちゃん、めっちゃ可愛かったな)
「おい、このモテモテ野郎!」
「おまえも、まんざらじゃないってか!」
「う、うるせぇ!」

 仲間たちにからかわれながら、勝也はアップを始めた。

   部室に駆け込んだ美代は、荷物をロッカーに入れると、先程の勝也の行動を思い出し、顔を覆った。

(頭を撫でてもらっちゃった。今まであんな風に触れてもらったことないのに)

   美代は大きく息を吸って、気持ちを切り替えた。

「やっぱり、あれのおかげなのかな?」
「なんのおかげ?」

   すぐそばに愛華が立っており、美代は驚いて飛び上がった。

「あ、愛華先輩。お疲れ様です」
「うん。お疲れ様!   で、なんのおかげなの?」
「え?」
「勝也に頭を撫でてもらってたよね?   それに朝も一緒に登校してたし。帰りだって、いつもってわけじゃないみたいだけど、一緒に帰ってるよね。ねぇ、どういうこと?」

   愛華は笑顔で美代に迫る。一方、美代は登下校の様子を愛華に見られていたことに、顔を青くする。

「美代ちゃんも、今までの子と一緒で、勝也狙いなんだね。でも、勝也は渡さないよ」
「わ、渡さないって、どういう意味ですか?」

    愛華の顔から、表情が抜け落ちる。

「勝也はあたしのものなの。絶対に誰にも渡さない」

   殺意にも似た目で睨みつけられ、美代はすくがる。
   美代の顔が恐怖で歪んだのを見ると、愛華はパッと笑顔になった。

「さ!    仕事しよっか!」
「は、はい……」

   美代は愛華に怯えながら、仕事をするために動き出した。
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