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電話ボックス
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「日本は古くから、人ならざるモノ、つまり妖怪や幽霊の存在を信じてきました。
そんなモノたちが活発になるのが、太陽が沈みゆくこの夕方。
昼と夜が入れ替わるこの間の時間帯は、ひどく境界があやふやでしてねぇ。出会うことがあるのですよ。人と人ならざるモノがね」
「そ、それがなんだっていうんですか。私には関係ありません。失礼します!」
美代は男の脇を通り過ぎようとする。だが、男が腕で道をさえぎって、通れないようにする。
「あなたは、ひどくなにかにお悩みのようだ。その悩み、解決したくはありませんか?」
「そ、それは……」
「あなたの悩みは、とても人には相談できない悩みのようです。ですが、それを解決してくれるモノを、私は知っています。どうです? 聞いてみたくはありませんか?」
男の誘惑に、美代はコクリと小さく頷いた。彼女の反応に、男の笑みが深くなる。
「実は逢魔が時の時間帯にだけ現れる、不思議な電話ボックスがこの先の公園の茂みの中にありましてね。使い方は簡単。受話器を取って、願い事を口にするだけ。ね? 簡単でしょう?」
「それは、本当に、どんな願いでも叶えてくれるんですか?」
「はい」
「たとえば、ある人にケガをしてほしいとかも?」
「はい」
「ある人の気持ちが、私に向いてくれるようにお願いすることも、できるんですか?」
「もちろんです」
美代は俯き、唇に指を当てて考え込む。
男の言葉は、美代にとってひどく魅力的だった。愛華をどうにかするだけじゃなく、もしかしたら勝也の心を自分に向けさせることも、できるかもしれない。
「あの! ってあれ?」
美代が顔を上げたとき、すぐそばにいたはずの男の姿はなかった。
そんなモノたちが活発になるのが、太陽が沈みゆくこの夕方。
昼と夜が入れ替わるこの間の時間帯は、ひどく境界があやふやでしてねぇ。出会うことがあるのですよ。人と人ならざるモノがね」
「そ、それがなんだっていうんですか。私には関係ありません。失礼します!」
美代は男の脇を通り過ぎようとする。だが、男が腕で道をさえぎって、通れないようにする。
「あなたは、ひどくなにかにお悩みのようだ。その悩み、解決したくはありませんか?」
「そ、それは……」
「あなたの悩みは、とても人には相談できない悩みのようです。ですが、それを解決してくれるモノを、私は知っています。どうです? 聞いてみたくはありませんか?」
男の誘惑に、美代はコクリと小さく頷いた。彼女の反応に、男の笑みが深くなる。
「実は逢魔が時の時間帯にだけ現れる、不思議な電話ボックスがこの先の公園の茂みの中にありましてね。使い方は簡単。受話器を取って、願い事を口にするだけ。ね? 簡単でしょう?」
「それは、本当に、どんな願いでも叶えてくれるんですか?」
「はい」
「たとえば、ある人にケガをしてほしいとかも?」
「はい」
「ある人の気持ちが、私に向いてくれるようにお願いすることも、できるんですか?」
「もちろんです」
美代は俯き、唇に指を当てて考え込む。
男の言葉は、美代にとってひどく魅力的だった。愛華をどうにかするだけじゃなく、もしかしたら勝也の心を自分に向けさせることも、できるかもしれない。
「あの! ってあれ?」
美代が顔を上げたとき、すぐそばにいたはずの男の姿はなかった。
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