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電話ボックス
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「え!? 勝也、ケガしたの!? 大変! あたし、テーピングしてあげる!」
美代が体育館に戻ると、愛華の慌てた声が聞こえてきた。
「いいよ。山路ちゃんにやってもらうから」
「え?」
「へ?」
愛華と美代の声が重なる。
だが、勝也は入り口で思わず立ち止まる美代を見つけると、笑顔で手を振った。
「あ、山路ちゃん。悪いんだけど、テーピングお願いできる?」
「は、はい! すぐ準備しますので、ベンチでお待ちください!」
「ごめんね。慌てなくていいから」
勝也は優しく言うが、頼まれた美代は急いで部室に救急箱を取りに行く。愛華から恨みを込めた視線を無視して。
救急箱を取り、美代はベンチに座っていた勝也の元に向かう。愛華はほかの仕事をしに行ったのか、その場にいなかった。
そのことに美代は、ホッと息をついて、救急箱をベンチに置いて、勝也の前に膝立ちになる。
「山路ちゃん、それじゃあ膝が痛いでしょ? ベンチに座りなよ」
「い、いえ。だ、だいじょうぶ、です」
「そう? じゃあ、お願いできる? 人差し指なんだけど」
勝也が差し出した指は、特別大きな変化は見られなかった。
しかし、選手である本人が違和感を覚えているのだから、早めに処置をすべきだと、美代は救急箱から冷却スプレーと、テーピングテープにハサミを取り出した。
「スプレー、かけますね」
美代は患部に冷却スプレーをかけ、慣れた手つきで指にテーピングを施していく。
「山路ちゃん、テーピング上手だね」
「ほ、ほんとですか!? ありがとうございます!」
勝也の褒め言葉に、美代は瞳を輝かせる。
「いやマジで上手だよ。俺なんて昔、ほかのやつにやってやったことあるんだけど、テープをすっげぇ無駄にして先輩に怒られたことあるんだ」
「勝也先輩でも、そんなことがあるんですね」
「自分もやるのと、他人にやるのとじゃ、感覚が違うからね」
美代は最後の仕上げと、テープにハサミを入れて、指を固定した。
「完成です」
「ありがとう」
美代に礼を言って、勝也は練習に戻った。
美代が体育館に戻ると、愛華の慌てた声が聞こえてきた。
「いいよ。山路ちゃんにやってもらうから」
「え?」
「へ?」
愛華と美代の声が重なる。
だが、勝也は入り口で思わず立ち止まる美代を見つけると、笑顔で手を振った。
「あ、山路ちゃん。悪いんだけど、テーピングお願いできる?」
「は、はい! すぐ準備しますので、ベンチでお待ちください!」
「ごめんね。慌てなくていいから」
勝也は優しく言うが、頼まれた美代は急いで部室に救急箱を取りに行く。愛華から恨みを込めた視線を無視して。
救急箱を取り、美代はベンチに座っていた勝也の元に向かう。愛華はほかの仕事をしに行ったのか、その場にいなかった。
そのことに美代は、ホッと息をついて、救急箱をベンチに置いて、勝也の前に膝立ちになる。
「山路ちゃん、それじゃあ膝が痛いでしょ? ベンチに座りなよ」
「い、いえ。だ、だいじょうぶ、です」
「そう? じゃあ、お願いできる? 人差し指なんだけど」
勝也が差し出した指は、特別大きな変化は見られなかった。
しかし、選手である本人が違和感を覚えているのだから、早めに処置をすべきだと、美代は救急箱から冷却スプレーと、テーピングテープにハサミを取り出した。
「スプレー、かけますね」
美代は患部に冷却スプレーをかけ、慣れた手つきで指にテーピングを施していく。
「山路ちゃん、テーピング上手だね」
「ほ、ほんとですか!? ありがとうございます!」
勝也の褒め言葉に、美代は瞳を輝かせる。
「いやマジで上手だよ。俺なんて昔、ほかのやつにやってやったことあるんだけど、テープをすっげぇ無駄にして先輩に怒られたことあるんだ」
「勝也先輩でも、そんなことがあるんですね」
「自分もやるのと、他人にやるのとじゃ、感覚が違うからね」
美代は最後の仕上げと、テープにハサミを入れて、指を固定した。
「完成です」
「ありがとう」
美代に礼を言って、勝也は練習に戻った。
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