上 下
1 / 38
序章

しおりを挟む
 辺り一面、夕焼け色の広い空間。そこに、コツコツコツ、と革靴の足音が響いている。
 コツン。と、足音が止まった。

「こんにちは。良い夕方ですね」

 気が付くと、目の前には全身真っ黒なスーツに身を包んだ糸目の男が、恭しい態度で立っていた。

「昼と夜が入れ替わる良い時間ですね。この時間を、何というか知っていますか?
 夕方。夕暮れ。夕刻。夕焼け。夕映え。夕さり。夕まし。
 ほかには、薄暮はくぼ薄明はくめい暮れ泥むくれなずむ入相いりあい。日の入り。黄昏たそがれ。そして、逢魔が時おうまがとき

 男はニヤリと笑う。

「逢魔が時。あなたはこの意味を、知っていますか? これは読んで字の如く、人と人ならざるモノたちが出逢う時のことをいいます。
 人ならざるモノ。彼らは、人の心の闇を好みます。甘い言葉で、人間を誘惑するのです。
 お聞かせいたしましょう。魔に魅入られてしまった、哀れな人間たちの末路を……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

タクシー運転手の夜話

華岡光
ホラー
世の中の全てを知るタクシー運転手。そのタクシー運転手が知ったこの世のものではない話しとは・・

Catastrophe

アタラクシア
ホラー
ある日世界は終わった――。 「俺が桃を助けるんだ。桃が幸せな世界を作るんだ。その世界にゾンビはいない。その世界には化け物はいない。――その世界にお前はいない」 アーチェリー部に所属しているただの高校生の「如月 楓夜」は自分の彼女である「蒼木 桃」を見つけるために終末世界を奔走する。 陸上自衛隊の父を持つ「山ノ井 花音」は 親友の「坂見 彩」と共に謎の少女を追って終末世界を探索する。 ミリタリーマニアの「三谷 直久」は同じくミリタリーマニアの「齋藤 和真」と共にバイオハザードが起こるのを近くで目の当たりにすることになる。 家族関係が上手くいっていない「浅井 理沙」は攫われた弟を助けるために終末世界を生き抜くことになる。 4つの物語がクロスオーバーする時、全ての真実は語られる――。

虫喰いの愛

ちづ
ホラー
邪気を食べる祟り神と、式神の器にされた娘の話。 ダーク和風ファンタジー異類婚姻譚です。 三万字程度の短編伝奇ホラーなのでよろしければお付き合いください。 蛆虫などの虫の表現、若干の残酷描写がありますので、苦手な方はご注意ください。 『まぼろしの恋』終章で登場する蝕神さまの話です。『まぼろしの恋』を読まなくても全然問題ないです。 また、pixivスキイチ企画『神々の伴侶』https://dic.pixiv.net/a/%E7%A5%9E%E3%80%85%E3%81%AE%E4%BC%B4%E4%BE%B6(募集終了済み)の十月の神様の設定を使わせて頂いております。 表紙はかんたん表紙メーカーさんより使わせて頂いております。

機織姫

ワルシャワ
ホラー
栃木県日光市にある鬼怒沼にある伝説にこんな話がありました。そこで、とある美しい姫が現れてカタンコトンと音を鳴らす。声をかけるとその姫は一変し沼の中へ誘うという恐ろしい話。一人の少年もまた誘われそうになり、どうにか命からがら助かったというが。その話はもはや忘れ去られてしまうほど時を超えた現代で起きた怖いお話。はじまりはじまり

凶兆

黒駒臣
ホラー
それが始まりだった。

バベルの塔の上で

三石成
ホラー
 一条大和は、『あらゆる言語が母国語である日本語として聞こえ、あらゆる言語を日本語として話せる』という特殊能力を持っていた。その能力を活かし、オーストラリアで通訳として働いていた大和の元に、旧い友人から助けを求めるメールが届く。  友人の名は真澄。幼少期に大和と真澄が暮らした村はダムの底に沈んでしまったが、いまだにその近くの集落に住む彼の元に、何語かもわからない言語を話す、長い白髪を持つ謎の男が現れたのだという。  その謎の男とも、自分ならば話せるだろうという確信を持った大和は、真澄の求めに応じて、日本へと帰国する——。

ぬい【完結】

染西 乱
ホラー
家の近くの霊園は近隣住民の中ではただのショートカットルートになっている。 当然私もその道には慣れたものだった。 ある日バイトの帰りに、ぬいぐるみの素体(ぬいを作るためののっぺらぼう状態)の落とし物を見つける 次にそれが現れた場所はバイト先のゲームセンターだった。

底なしの穴

沖方菊野
ホラー
私の名は、山葉凛子にございます。最近、私のお部屋に面したお庭に 妙な穴ができましたの……。あれは一体何かしら?

処理中です...