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四ノ巻 剣術指南はお任せを 虎之介

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 依頼を拒否されると思っていなかったのか、佐吉の反応が遅れる。

「暴力をするために、戦い方を、剣術を教えるわけにはいかないにゃ。暴力にたいして暴力で返すのは、おまえをいじめてくるやつらと同類だにゃ。わかったら、おとなしく帰りやがれにゃ」

 虎之介はいいたいことだけいいって、店の奥にある居住部屋へと、行ってしまった。

「……な、なんだよ! 人の気も知らないで! この役立たず!!」

 佐吉が怒鳴るも、虎之介が戻ってくる気配はない。
 佐吉の顔が泣くのをこらえるように、くしゃっとゆがむ。お蘭は小さく、ため息をついた。

「すまないね、うちのが。でも、あの子のいう通りだよ。暴力い暴力で訴えても意味がない。寺子屋の先生は、助けてくれないのか?」
「あいつは、慶次のやつは、先生の前だとすごくいい子ぶるんだ。それにおれが言っても、慶次と一緒にいるやつらが、『慶次はそんなことしてない!』って言ったら、先生はそっちを信じるんだ」
「んー。難しい問題だねぇ」

 お蘭は腕を組んで、考え込む。佐吉はついに、うつむいてしまった。

「おれ、どうすればいいの? 母ちゃんには心配かけたくないいから、いじめられてるなんて言えないし……。このまま、いじめられ続けるの?」

 佐吉の寂しそうな、すがりつくような表情を見て、お蘭は佐吉の頭を撫でた。

「お客さん、明日もおいで。虎之介には私から頼んでおこう」
「暴力は、いけないんじゃないの?」
「もちろん、暴力はいけないよ。でも、戦い方っていうのは、ひとつじゃないからね」
「よくわかんないけど、わかった」

 佐吉は頭に疑問符を浮かべながらも、帰っていった。
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