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三ノ巻 文の配達はお任せを 月夜

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 源次郎の言っていた武家は、とても大きな屋敷で、門前には犬神いぬがみむじなが、槍を持って警備のために立っていた。

(す、すごいにゃ。武家屋敷に来たのは、はじめてだにゃ。で、でもどうやって言えばいいにゃ……?)

 月夜がどうしていいかわからずにいると、犬神の男が月夜に気づいた。

「そこの猫又。なにか用か?」
「にゃ!?」

 突然、声をかけられて月夜は声をあげた。

「用がないなら立ち去れ」
「よ、用ならある、にゃ。ぼくは『化け猫亭』の飛脚、月夜ですにゃ。えっと、えっと……」

 月夜は犬神の迫力が怖くて荷物があると言えず、持っている鞄と門に視線をいったり来たりさせる。すると貉の男が吹き出した。

「ぷっ。もう、犬飼のせいで、怖がっちゃったじゃん」
「む。すまんな。もとから、こういう顔なのだ」
「にゃ、にゃ~」

 貉は少しでも月夜に目線を近づけるため、しゃがみこんだ。

「俺、知ってるよ。『化け猫亭』のこと。忙しい人とか困ってるひとに化け猫の手を、貸してくれるお店だよね」

 貉の言葉に、月夜は何度もうなずく。
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