114 / 195
第七環「知識より先に」
⑦-5 再びの約束を、ここに②
しおりを挟む
「ここどこ! え⁉」
「雨宿りの為に洞窟に入ったんじゃないのか。ほら、エーディエグレスの森へ、アキレアを探しに入っただろう」
「そう、そうだった! アルが見つけてくれたんだ」
「いや、見つけたのはティトーだっただろ」
「そうだっけ? 忘れちゃった。まだ眠いや」
ティトーは腕を大きく上へ伸ばすと、大きなあくびをした。首を横にフルフルすると、すぐにぼんやりとし始めた。
「アキレアはマリアに手渡したよ」
「本当⁉ じゃあ、おにいちゃんは助かるの⁉」
「助かるのって、助かるんだろう? ティトー」
アルブレヒトはティトーを抱きしめると胸へ顔を埋めさせた。天からは光が差し込み、雨が止んだことを示している。オレンジ色の夕日の色が差し込みだしたのだ。
「アル? どうしたの?」
「いや、お前が無事で良かった」
「あ。洞窟のは入り口にね、ミランダさんがくれた紐を木の枝に括り付けたの。わかった? あと、位置を動く前に森で、ハンカチをね」
「ああ。わかったよ。でも、あまり動かないで欲しかった」
アルブレヒトは力強くティトーを抱きしめると、そのまま動かなくなってしまった。
「泣いているの? ボク、大丈夫だよ」
「ああ。わかっている」
アルブレヒトは強く抱きしめると、再び動かなくなってしまった。戸惑うティトーだったが、素直に抱きしめ返しながら顔を埋めた。
「心配かけて、ごめんなさい。僕、寒くて」
「いや、いいんだ。それより、足は大丈夫か」
アルブレヒトは顔を上げると、ティトーへ向き合った。夕日が差し込み、ティトーを赤く照らした。アルブレヒトは手を差し伸ばしたが、少年は万遍の笑みを浮かべると、自分の力で立ち上がった。
「ボク、歩けるよ」
「いや、怪我していただろう」
ティトーは右足を見せた。そこには不器用に包帯が巻かれているものの、しっかりとした足踏みをしている。
「なんか、治っちゃったの」
「それでもいいんだ。ほら」
アルブレヒトはティトーに背を向けると、背に乗るように促した。
「え?」
「おんぶしていくから、ほら」
「…………うん」
ティトーは照れながらアルブレヒトの背にしがみついた。そのままティトーを背負うと、洞窟を後にしようとした。
「待って」
「うん。お祈り、していくか」
「うん」
ティトーは背負わされたまま、深く目を閉じると頭を下げた。ティトーが寝ころんでいた岩陰に、小さな岩が置いてあり、ティトーがお祈りをしている間、アルブレヒトはその小さな岩を見つめながら言った。
「また、来るからな」
ポツリとつぶやいた言葉に、意味も分からずに少年は頷いたのだった。夕暮れ時を知らせる、夕日が大きく洞窟を照らすころ、二人は洞窟を後にした。
「雨宿りの為に洞窟に入ったんじゃないのか。ほら、エーディエグレスの森へ、アキレアを探しに入っただろう」
「そう、そうだった! アルが見つけてくれたんだ」
「いや、見つけたのはティトーだっただろ」
「そうだっけ? 忘れちゃった。まだ眠いや」
ティトーは腕を大きく上へ伸ばすと、大きなあくびをした。首を横にフルフルすると、すぐにぼんやりとし始めた。
「アキレアはマリアに手渡したよ」
「本当⁉ じゃあ、おにいちゃんは助かるの⁉」
「助かるのって、助かるんだろう? ティトー」
アルブレヒトはティトーを抱きしめると胸へ顔を埋めさせた。天からは光が差し込み、雨が止んだことを示している。オレンジ色の夕日の色が差し込みだしたのだ。
「アル? どうしたの?」
「いや、お前が無事で良かった」
「あ。洞窟のは入り口にね、ミランダさんがくれた紐を木の枝に括り付けたの。わかった? あと、位置を動く前に森で、ハンカチをね」
「ああ。わかったよ。でも、あまり動かないで欲しかった」
アルブレヒトは力強くティトーを抱きしめると、そのまま動かなくなってしまった。
「泣いているの? ボク、大丈夫だよ」
「ああ。わかっている」
アルブレヒトは強く抱きしめると、再び動かなくなってしまった。戸惑うティトーだったが、素直に抱きしめ返しながら顔を埋めた。
「心配かけて、ごめんなさい。僕、寒くて」
「いや、いいんだ。それより、足は大丈夫か」
アルブレヒトは顔を上げると、ティトーへ向き合った。夕日が差し込み、ティトーを赤く照らした。アルブレヒトは手を差し伸ばしたが、少年は万遍の笑みを浮かべると、自分の力で立ち上がった。
「ボク、歩けるよ」
「いや、怪我していただろう」
ティトーは右足を見せた。そこには不器用に包帯が巻かれているものの、しっかりとした足踏みをしている。
「なんか、治っちゃったの」
「それでもいいんだ。ほら」
アルブレヒトはティトーに背を向けると、背に乗るように促した。
「え?」
「おんぶしていくから、ほら」
「…………うん」
ティトーは照れながらアルブレヒトの背にしがみついた。そのままティトーを背負うと、洞窟を後にしようとした。
「待って」
「うん。お祈り、していくか」
「うん」
ティトーは背負わされたまま、深く目を閉じると頭を下げた。ティトーが寝ころんでいた岩陰に、小さな岩が置いてあり、ティトーがお祈りをしている間、アルブレヒトはその小さな岩を見つめながら言った。
「また、来るからな」
ポツリとつぶやいた言葉に、意味も分からずに少年は頷いたのだった。夕暮れ時を知らせる、夕日が大きく洞窟を照らすころ、二人は洞窟を後にした。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる