82 / 228
暁の草原 番外編1
〇番外編1-4 パーティーにて②
しおりを挟む
景国には、確か大陸のセシュール王子が武者修行へ行っていると聞く。王子といっても、族長の長男であるだけで、王族ではないらしい。それでも、連合王国時代のルゼリアの血も引いた王子だ。
「彼よりは、私のほうが恵まれてる、そうだよね」
あまりいい噂を聞かないルゼリア王国と、なぜ多民族国家のセシュールが連合王国となったのか。マリアは歴史書も新聞も読むことを許されていないために無知だ。
「今日掃除出来なかった分、明日大変なんだろうな」
ぼんやりと掃除の算段をしていると、後ろか賑やかなな声が聞こえてきた。
抜け出しの男女だ。マリアは一礼すると、別のバルコニーへ移ろうとパーティー会場へ戻ることにした。
◇
会場は暖かく、煌びやかなドレスに身を包んだ成人前の女性を、男性がアプローチしていた。マーシャはきっと相手にされず、帰宅前の馬車から暴言を浴びせられるであろう。せめて怒りを収められる食事を少しでも取って居て欲しいものだ。
かの王子、アルブレヒトはもう姿が見えず、王族の姿もない。もう彼らの出番は終えているのだろう。
「挨拶もしなかったけれど、いいわよね」
王家もマリアの存在は一貫して無視だったのだ。それが突然招待状を送ってきたのだ。おそらく、目当ては。
(あわよくば、アルブレヒト殿下の輿入れか。王子も大変ね)
マリアは改めて無人のバルコニーを見つけると、手すりに手をかけた。景色は大陸であるものの、距離があり夜であることもあって光がポツポツ見える程度だ。星空は冬であるせいかよく見えない。
月の幻影だけが、不気味に輝き続ける。それがこの世界、レスティン・フェレスだ。
「先客がいたか」
男性の声に、マリアはハッとすると、一礼しようと考えて振り返った。またバルコニーを変えなければならないと考えていたが、その思考は一瞬にして消え去った。
「あ……」
そこには、アンセム国が王子アルブレヒトが居たのだ。
「彼よりは、私のほうが恵まれてる、そうだよね」
あまりいい噂を聞かないルゼリア王国と、なぜ多民族国家のセシュールが連合王国となったのか。マリアは歴史書も新聞も読むことを許されていないために無知だ。
「今日掃除出来なかった分、明日大変なんだろうな」
ぼんやりと掃除の算段をしていると、後ろか賑やかなな声が聞こえてきた。
抜け出しの男女だ。マリアは一礼すると、別のバルコニーへ移ろうとパーティー会場へ戻ることにした。
◇
会場は暖かく、煌びやかなドレスに身を包んだ成人前の女性を、男性がアプローチしていた。マーシャはきっと相手にされず、帰宅前の馬車から暴言を浴びせられるであろう。せめて怒りを収められる食事を少しでも取って居て欲しいものだ。
かの王子、アルブレヒトはもう姿が見えず、王族の姿もない。もう彼らの出番は終えているのだろう。
「挨拶もしなかったけれど、いいわよね」
王家もマリアの存在は一貫して無視だったのだ。それが突然招待状を送ってきたのだ。おそらく、目当ては。
(あわよくば、アルブレヒト殿下の輿入れか。王子も大変ね)
マリアは改めて無人のバルコニーを見つけると、手すりに手をかけた。景色は大陸であるものの、距離があり夜であることもあって光がポツポツ見える程度だ。星空は冬であるせいかよく見えない。
月の幻影だけが、不気味に輝き続ける。それがこの世界、レスティン・フェレスだ。
「先客がいたか」
男性の声に、マリアはハッとすると、一礼しようと考えて振り返った。またバルコニーを変えなければならないと考えていたが、その思考は一瞬にして消え去った。
「あ……」
そこには、アンセム国が王子アルブレヒトが居たのだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。


ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる