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第七輪「嫉妬の狼煙」
⑦-14 火のない所に狼煙は立たぬ③
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レオンはマリアから花束を改めて受け取ると、二人は教会を目指しなおした。余りの不自然の無さに、マリアは逆に声を上げてしまった。
「え。女性、苦手だったんですか?」
「え、ええ。まあ。でも看護師は女性が多いですしね。その、大変でしたよ」
「勿体ない。すごいカッコイイのに。モテたでしょう」
「いえ、そんなことはありませんよ。そう言われるのはあまり好きではありませんので、控えていただけると幸いです」
レオンは顔を赤くしながら、眼鏡を少し曇らせた。マリアは分かったと二度頷くと、そのまま堪え切れずに笑いだした。
「女の人が苦手だなんて、全然わかりませんでした。先生って、結構我慢しちゃうんですね」
「いえ、えっと。結構頑張っているのですよ。仕事以外だと、しどろもどろになってしまって」
「ティニアは気にしてなかったみたいだけど」
マリアの返答に、レオンは笑い出した。今までマリアが見た中で、一番無邪気に笑っている。
「ティニアさんね。本当に、不思議な方ですよね。綺麗過ぎて冷たい方なのかと思いましたが、内面が非常にコミカルで」
「わかるわ。ちょっと冷たそうで読書しかしてない病弱な人みたいな見た目よね」
「そ、それはそれでどうかと思いますが、そうですね。でもそう言われるなら、ティナさんもそうかもしれません。ああ、褒め言葉という意味でですよ」
「ふーん。先生って、ティナさんが好みだったんだ」
「ええええええええええええええええええええ」
素っ頓狂な声がこだますると、周囲の観光客が笑いながら通り過ぎていった。慌てて二人は教会の見える、最後の角を曲がった。
「ふふ。そんな声あげちゃうなんて。気付いてなかったんですか」
「いえ、いえあの。いえ……いえ。というか、マリアさんは診療所へ行くのでは!?」
「そうなんだけど。話が面白くてここまで来ちゃった。ふふふ。じゃあ、私はティナさんに早めの退院祝いの花束を渡して、先生の想いをそれとなく伝えてくるわね」
「ちょ、ちょっとまって、ください! マリアさん、ダメですよ。ダメですからね!」
マリアは笑いながら、来た道を戻ると診療所へ向かったのだった。レオンは目には涙を浮かべながら、諦めて教会を目指した。
路地を曲がったところで、マリアはポツリと呟いた。
「そうよね。うん。皆、恋するよね。ティニアも、ティナも素敵なんだもん。いいなあ。二人とも……」
白鷺が珍しくシュタインアムラインの上空を滑空する。美しい白き未姿は不吉な知らせか、それとも――――――。
「寂しいな。私は、ひとりぼっちなのに…………」
朱色の髪の美しい女性は、少女のように涙で頬を濡らしながら、路地を進んでいったのだった。
「え。女性、苦手だったんですか?」
「え、ええ。まあ。でも看護師は女性が多いですしね。その、大変でしたよ」
「勿体ない。すごいカッコイイのに。モテたでしょう」
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レオンは顔を赤くしながら、眼鏡を少し曇らせた。マリアは分かったと二度頷くと、そのまま堪え切れずに笑いだした。
「女の人が苦手だなんて、全然わかりませんでした。先生って、結構我慢しちゃうんですね」
「いえ、えっと。結構頑張っているのですよ。仕事以外だと、しどろもどろになってしまって」
「ティニアは気にしてなかったみたいだけど」
マリアの返答に、レオンは笑い出した。今までマリアが見た中で、一番無邪気に笑っている。
「ティニアさんね。本当に、不思議な方ですよね。綺麗過ぎて冷たい方なのかと思いましたが、内面が非常にコミカルで」
「わかるわ。ちょっと冷たそうで読書しかしてない病弱な人みたいな見た目よね」
「そ、それはそれでどうかと思いますが、そうですね。でもそう言われるなら、ティナさんもそうかもしれません。ああ、褒め言葉という意味でですよ」
「ふーん。先生って、ティナさんが好みだったんだ」
「ええええええええええええええええええええ」
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「ふふ。そんな声あげちゃうなんて。気付いてなかったんですか」
「いえ、いえあの。いえ……いえ。というか、マリアさんは診療所へ行くのでは!?」
「そうなんだけど。話が面白くてここまで来ちゃった。ふふふ。じゃあ、私はティナさんに早めの退院祝いの花束を渡して、先生の想いをそれとなく伝えてくるわね」
「ちょ、ちょっとまって、ください! マリアさん、ダメですよ。ダメですからね!」
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「そうよね。うん。皆、恋するよね。ティニアも、ティナも素敵なんだもん。いいなあ。二人とも……」
白鷺が珍しくシュタインアムラインの上空を滑空する。美しい白き未姿は不吉な知らせか、それとも――――――。
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