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第七輪「嫉妬の狼煙」
⑦-1 小さくて大きな約束①
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この物語はフィクションです。実際の国、団体、人と関係はありません。
=====
スイスという国は世中立国である。他国との国境に面するシャフハウゼンにある美しい旧市街地、シュタインアムライン。この美しい町も、様々な理由から爆撃を受けた。屋根に白十字を描き、スイスであると主張したにもかかわらず、新たな若い国はその意味を知らなかった。疑問に思いつつ、爆撃を行った言われている。そして、様々な理由からその空爆は、誤爆と言われている。
様々な理由と理不尽とは、道理とは。正義とは何であろうか。
時は1950年、そのシュタインアムラインは比較的に快適な気候である六月は二週目を迎えた。日の入りは21時前後であり、涼しくもある寒暖差で過ごしやすい気候だ。夕闇は非常に美しく、夜空は様々な表情を見せてくれる。
そんな街に、短めの金髪に碧眼を持つ女性が、早朝から小さな教会を訪れている。
物語は、大きく動き出すとともに、中世の世界へ、彼女たちを誘うのだろうか?
◇◇◇
「その銀の懐中時計、懐かしいですね。もう一対は、どうされたのですか?」
教会で佇む金髪碧眼の女性へ、教会の神父アドニスは問いかけた。アドニスは細目に細身であり、飄々とした見た目の通り、変わった性格をしている。アドニスとは神話の美少年のことであるが、神父は初老の男だ。
「あの子達に預けているよ。暫く行けていないからね」
女性はアドニスを見つめると、目を細めて微笑んだ。アドニスも同じように目を細める。
「そうですか。そちらは貴女ので?」
「ボクのじゃないよ。あの子たちがそう言っていたからね」
「そのうち思い出せますよ。……中身は、そのままなのですか」
「そうなんじゃないかな。人の物を勝手に開けるようなこと、ボクがするとでも?」
「そうですよね」
朝焼けの光が教会のステンドグラスに注ぎ込むと、その青と緑とが交錯、屈折する。そのまま不思議な黄色い光を、彼女へ差し込んでいった。そのステンドグラスの仕掛けを考えたのはアドニスであり、輝く彼女はそれを知らない。
ティニアは潤んだ瞳で銀時計を見つめると、寂しそうに微笑んだ。その微笑みは自虐的でありながらも、寂しさを噛みしめた表情であり、その感情を向ける相手を、神父は理解していた。
「さすがに、ずっと会えていないから、寂しがってくれているかな」
「あの子達がですか? それとも、あなたがですか? いや、何でも有りませんよ」
「ふふふ、ボクは寂しいよ。でもお兄ちゃんの方は、素直じゃないからなあ」
「仕方ありませんよ。思春期なのです。それで、そちらは御開けにはならないのですか」
細目を更に細めると、神父は女性に語りかけた。否、諭しているのだ。
「やだよ。開ける意味なんてないでしょ」
「もう、いいではありませんか。何年経ったのです。開けてしまいなさい。もしかしたら、手紙が入っているかも」
「なんでだよ。中身が個人的に気になっているだけでしょ? これは、ボクのじゃないんだから」
「無事に戻ってきたら、話があるから聞いてほしいと言われたのでしょう」
「そう言って、誰も帰って来なかった」
ティニアは吐き捨てるように、話しながら自虐的に微笑んだ。最近は特に、自虐的に微笑むようになったと、アドニスは悲しく感じていた。
この物語はフィクションです。実際の国、団体、人と関係はありません。
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スイスという国は世中立国である。他国との国境に面するシャフハウゼンにある美しい旧市街地、シュタインアムライン。この美しい町も、様々な理由から爆撃を受けた。屋根に白十字を描き、スイスであると主張したにもかかわらず、新たな若い国はその意味を知らなかった。疑問に思いつつ、爆撃を行った言われている。そして、様々な理由からその空爆は、誤爆と言われている。
様々な理由と理不尽とは、道理とは。正義とは何であろうか。
時は1950年、そのシュタインアムラインは比較的に快適な気候である六月は二週目を迎えた。日の入りは21時前後であり、涼しくもある寒暖差で過ごしやすい気候だ。夕闇は非常に美しく、夜空は様々な表情を見せてくれる。
そんな街に、短めの金髪に碧眼を持つ女性が、早朝から小さな教会を訪れている。
物語は、大きく動き出すとともに、中世の世界へ、彼女たちを誘うのだろうか?
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「その銀の懐中時計、懐かしいですね。もう一対は、どうされたのですか?」
教会で佇む金髪碧眼の女性へ、教会の神父アドニスは問いかけた。アドニスは細目に細身であり、飄々とした見た目の通り、変わった性格をしている。アドニスとは神話の美少年のことであるが、神父は初老の男だ。
「あの子達に預けているよ。暫く行けていないからね」
女性はアドニスを見つめると、目を細めて微笑んだ。アドニスも同じように目を細める。
「そうですか。そちらは貴女ので?」
「ボクのじゃないよ。あの子たちがそう言っていたからね」
「そのうち思い出せますよ。……中身は、そのままなのですか」
「そうなんじゃないかな。人の物を勝手に開けるようなこと、ボクがするとでも?」
「そうですよね」
朝焼けの光が教会のステンドグラスに注ぎ込むと、その青と緑とが交錯、屈折する。そのまま不思議な黄色い光を、彼女へ差し込んでいった。そのステンドグラスの仕掛けを考えたのはアドニスであり、輝く彼女はそれを知らない。
ティニアは潤んだ瞳で銀時計を見つめると、寂しそうに微笑んだ。その微笑みは自虐的でありながらも、寂しさを噛みしめた表情であり、その感情を向ける相手を、神父は理解していた。
「さすがに、ずっと会えていないから、寂しがってくれているかな」
「あの子達がですか? それとも、あなたがですか? いや、何でも有りませんよ」
「ふふふ、ボクは寂しいよ。でもお兄ちゃんの方は、素直じゃないからなあ」
「仕方ありませんよ。思春期なのです。それで、そちらは御開けにはならないのですか」
細目を更に細めると、神父は女性に語りかけた。否、諭しているのだ。
「やだよ。開ける意味なんてないでしょ」
「もう、いいではありませんか。何年経ったのです。開けてしまいなさい。もしかしたら、手紙が入っているかも」
「なんでだよ。中身が個人的に気になっているだけでしょ? これは、ボクのじゃないんだから」
「無事に戻ってきたら、話があるから聞いてほしいと言われたのでしょう」
「そう言って、誰も帰って来なかった」
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