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第二輪「例え鳴り響いた鐘があったとしても」
②-18 黄昏時を紫雲に代えゆ④
しおりを挟む「そんなわけないでしょ、知らないよ。こんなやつ」
そういうと、ティニアはアルベルトに更に一歩接近したため、アドニスは慌てて二人に近づこうと焦った。しかし、ティニアは腕を、人差し指をアルベルトに突き出した。
「とにかく、その話し方はやめてほしい」
「何故でしょうか?」
アドニスが二人を交互に見比べ終える頃には、アルベルトは年よりもずっと幼く微笑むと、我慢しきれずに声を出して吹き出してしまったのだ。
「ハハハ!! ごめん、ごめん。悪かったよ。癖になってたんだ。確かに、君は俺の探してるヒトじゃないな」
「そーでしょうよ。ボクはボクだからね! でも、さっきまでの君は、とてつもなく、きもちが悪いんだ!」
「あーもう、本当に。ティニア、さんでしたっけ?」
「うむ。ボクがティニアである。君は?」
「ハハハ、本当に。もう、ちゃんと名乗ってるんだけどな。アルベルト。アルバートでもいいぞ」
「それはやだなあ。個人的に。アルベルトでいいかい」
「ままま、待ってください、ちょっと!!」
ついに置いて行かれていた事に気付いたアドニスは、二人の間に割って入ると、急いで二人を引き離した。
「何がどうなっているか知りませんけど!! つまりなんですか!? 衛兵は呼ぶんですか、呼ばないんですか!!」
「ええ。うあー、忘れてた。ボクは別に呼んでもいいけど」
「ハハハ!! 忘れてた。俺も、別に呼んでもらって構わないぞ」
二人は笑いながら、衛兵の敬礼の真似をし始めた。
「だろうね。神父、多分呼んだら有耶無耶にされたあげく、神父が締め上げられるよ」
「ええ!? な、なぜですか! こんなしがない小さな教会の神父を、カツアゲですか!?」
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「それについては、一切お答えできませんね」
「ちょっと待ってください。ティニア、君、わかって黙っていましたね?」
二者の笑い声は、扉を突き抜けて町へと流れたものの、夕時の騒がしい人々の喧騒によって、かき消されていった。
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