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第二輪「例え鳴り響いた鐘があったとしても」
②-5 白銀の太陽を求めて⑤
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「おや、ティニアさんじゃないか。こんな時間に珍しい」
広場に現れた、短めの金髪碧眼を持つ、美少女のようなあどけなさを残す女性ティニア。身長は160㎝程ではあるものの、この辺りでは小柄だ。毛並みは緩やかなウェーブがあるものの、毛先が無邪気に遊んでいるのは、まるで彼女自身を表しているかのようである。
ティニアは驚きつつも、呼びかけた主が誰だが把握できたようで、すぐにお道化て見せた。
「ああ、誰かと思った。チューリッヒから、ザンクト・ガレンまで引っ越したんじゃなかった? ここはライン川沿いだよ。北上しすぎたんじゃない」
「またあんたは、すぐそういう冗談を!」
「ふふふ。冗談だよ。ミュラーの奥さんを見送りに来たんでしょ」
「やっぱりわかってるんじゃないか。それで、どうしたんだい。多忙のあんたが、まだ明るいうちにこんな広場に」
「ボクは最近早上がりなんだよ」
「それでいいんだよ。あんたは働きすぎなんだ、もっと過保護にしたっていいと思ってるよ」
「ちょっとやめて。本当にやめてよ? アンナさん、影響力あるんだからね」
アンナと呼ばれた女性はティニアのように金髪であり、目も青い。身長もティニアと同じくらいであるが、二者の服装は大きく異なっていた。アンナはブランドスーツを身にまとい、本を何冊か運んでいる途中だったようだった。
「あたしも色々あってさ。それに、ザンクト・ガレンはあたしには合わなくてね。奴ら早口でまくし立てるんだよ」
「そんな速いかなあ」
「ザンクト・ガレンはいいとこだよ。熊も由来の大きな町さ。……ねえ、ティニア。あんた、いつまでこの町に居るつもりだい」
数秒の間が空き、ティニアの表情が一瞬で無表情になると、不思議そうに周囲を見渡し始めた。そして目の前の談笑相手の存在を思い出し、慌てて弁解した。
「………………え? ……ごめん、聞いてなかった」
「まったく……。忙しすぎて疲れてるんじゃないかい? 修道院は綺麗だし、本の貯蔵量も……」
アンナはティニアの性格を熟知していたため、今回も話を逸らそうと、彼女があえてそう行動したのだと思い込んでしまった。しかし、話し込む過程で彼女の様子がおかしいことに気付き、得意のおしゃべりを止めてしまった。
「……………………」
「……? ティニア。どうしたんだい」
「…………あ。あの、ボク、そろそろ」
「ティニア? あんた、顔が真っ青……」
「すみません、お嬢さん方」
不意に声を掛けられアンナが振り返ると、そこには背の高い男が立っていた。長い紺色のコートを羽織り、髪は短めの赤茶であり癖毛が目立つ。
広場に現れた、短めの金髪碧眼を持つ、美少女のようなあどけなさを残す女性ティニア。身長は160㎝程ではあるものの、この辺りでは小柄だ。毛並みは緩やかなウェーブがあるものの、毛先が無邪気に遊んでいるのは、まるで彼女自身を表しているかのようである。
ティニアは驚きつつも、呼びかけた主が誰だが把握できたようで、すぐにお道化て見せた。
「ああ、誰かと思った。チューリッヒから、ザンクト・ガレンまで引っ越したんじゃなかった? ここはライン川沿いだよ。北上しすぎたんじゃない」
「またあんたは、すぐそういう冗談を!」
「ふふふ。冗談だよ。ミュラーの奥さんを見送りに来たんでしょ」
「やっぱりわかってるんじゃないか。それで、どうしたんだい。多忙のあんたが、まだ明るいうちにこんな広場に」
「ボクは最近早上がりなんだよ」
「それでいいんだよ。あんたは働きすぎなんだ、もっと過保護にしたっていいと思ってるよ」
「ちょっとやめて。本当にやめてよ? アンナさん、影響力あるんだからね」
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「そんな速いかなあ」
「ザンクト・ガレンはいいとこだよ。熊も由来の大きな町さ。……ねえ、ティニア。あんた、いつまでこの町に居るつもりだい」
数秒の間が空き、ティニアの表情が一瞬で無表情になると、不思議そうに周囲を見渡し始めた。そして目の前の談笑相手の存在を思い出し、慌てて弁解した。
「………………え? ……ごめん、聞いてなかった」
「まったく……。忙しすぎて疲れてるんじゃないかい? 修道院は綺麗だし、本の貯蔵量も……」
アンナはティニアの性格を熟知していたため、今回も話を逸らそうと、彼女があえてそう行動したのだと思い込んでしまった。しかし、話し込む過程で彼女の様子がおかしいことに気付き、得意のおしゃべりを止めてしまった。
「……………………」
「……? ティニア。どうしたんだい」
「…………あ。あの、ボク、そろそろ」
「ティニア? あんた、顔が真っ青……」
「すみません、お嬢さん方」
不意に声を掛けられアンナが振り返ると、そこには背の高い男が立っていた。長い紺色のコートを羽織り、髪は短めの赤茶であり癖毛が目立つ。
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