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第一輪「朱の福音はどんな音?」
①-7 異質な存在①
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先ほどの子供たちとの和やかな時間とは対照的に、張り詰めた緊張と共に、感覚を研ぎ澄ませる。今回も、誰も気付いていない。
マリアは無知だった。襲撃を受けた拠点がイタリアという国にあった可能性があると知ったのも、最近である。
追手から逃げ切るため、ひたすら北を目指し続けたが、経路までは記憶に残っていない。追ってから逃れるために、情勢の一番悪い経路を選択していたはずである。
ティニア達の話が事実であれば、発見されたのは1936年2月頃だという。イタリアという国は他国に侵略したことですでに戦争状態であったというが、マリアはそれすら知らなかった。
◇
「南にあった島から大陸へ渡って、ひたすら更に北上してきたの……」
「なるほど。僕らはここから南下するから、来た道を戻ることになるけれど、構わない?」
「助けてくれるの?」
「助けるよ」
ティニア達は先を急いでいたが、マリアの為に数日留まり治療に当たってくれた。ティニアは大勢の避難民を抱えていたリーダーのような存在であった。彼女たちが中立国のスイスへ渡ろうとしていたことを知るものの、スイスという国がどこにあるのか。スイスという国そのものについても、マリアは知らなかった。
(無知だったなぁ。本当に……)
(南下は簡単じゃなかった。一人で単に北へ行くのとはわけが違った)
今いるのは、イタリアの上空だ。今でさえ戦闘機は無いのの、レーダーにマリアは映らない。
拠点がイタリアのシチリア島にあったと気づいたのは、ティニアの持っていた世界地図を見てからだ。島の形がそのままだった、ただそれだけの情報だ。そして、それ以外の情報は未だ何もない。
マリアは、あの日にティニア達と出会い、財団に保護されたとの日々に思いを馳せる――――。
◇
(南下の途中で身動きの取れなくなった女性や幼い子供は大勢いた。皆祖国から逃げてきて……共に南下してたけれど、もう故郷の国が存在しないという人もいたし、祖国に居たら殺される人達も多かった…………)
マリアには国と概念はよく理解できていない。それほどまでに、マリアという存在は異質だ。
イタリアの上空から、拠点と思しきシチリア島を見つめるものの、やはり手掛かりは0だ。
(本当にイタリアだったのかも、シチリア島だったのかも、私がわからないんじゃダメね……。こんな事を初めて数週間。何の進歩もない)
戦争により、当時の国境は曖昧であった。それでも、シチリアはずっとイタリアだ。
南下する最中、どこからがスイスなのか、マリアも他の女性たちもわからないようだった。誰もが無言であり、ティニアですら無言だった。いつ撃ち抜かれても可笑しくない状況で張り詰めていた。
道中にフェンスはあったが、何事もなく通過していたため余計に不気味だったのだ。
いつ殺されても可笑しくない、張り詰めた空気。重苦しい足取り。疲労から来る絶望感。
あれが国境なのか、誰も聞かなかった。そしてその集団の前に現れたのが、アドニスたち聖職者であった。
暖かいスープや布が提供され、誰も訪ねることなくここが永世中立国内であることを悟ったのだ。
マリアは無知だった。襲撃を受けた拠点がイタリアという国にあった可能性があると知ったのも、最近である。
追手から逃げ切るため、ひたすら北を目指し続けたが、経路までは記憶に残っていない。追ってから逃れるために、情勢の一番悪い経路を選択していたはずである。
ティニア達の話が事実であれば、発見されたのは1936年2月頃だという。イタリアという国は他国に侵略したことですでに戦争状態であったというが、マリアはそれすら知らなかった。
◇
「南にあった島から大陸へ渡って、ひたすら更に北上してきたの……」
「なるほど。僕らはここから南下するから、来た道を戻ることになるけれど、構わない?」
「助けてくれるの?」
「助けるよ」
ティニア達は先を急いでいたが、マリアの為に数日留まり治療に当たってくれた。ティニアは大勢の避難民を抱えていたリーダーのような存在であった。彼女たちが中立国のスイスへ渡ろうとしていたことを知るものの、スイスという国がどこにあるのか。スイスという国そのものについても、マリアは知らなかった。
(無知だったなぁ。本当に……)
(南下は簡単じゃなかった。一人で単に北へ行くのとはわけが違った)
今いるのは、イタリアの上空だ。今でさえ戦闘機は無いのの、レーダーにマリアは映らない。
拠点がイタリアのシチリア島にあったと気づいたのは、ティニアの持っていた世界地図を見てからだ。島の形がそのままだった、ただそれだけの情報だ。そして、それ以外の情報は未だ何もない。
マリアは、あの日にティニア達と出会い、財団に保護されたとの日々に思いを馳せる――――。
◇
(南下の途中で身動きの取れなくなった女性や幼い子供は大勢いた。皆祖国から逃げてきて……共に南下してたけれど、もう故郷の国が存在しないという人もいたし、祖国に居たら殺される人達も多かった…………)
マリアには国と概念はよく理解できていない。それほどまでに、マリアという存在は異質だ。
イタリアの上空から、拠点と思しきシチリア島を見つめるものの、やはり手掛かりは0だ。
(本当にイタリアだったのかも、シチリア島だったのかも、私がわからないんじゃダメね……。こんな事を初めて数週間。何の進歩もない)
戦争により、当時の国境は曖昧であった。それでも、シチリアはずっとイタリアだ。
南下する最中、どこからがスイスなのか、マリアも他の女性たちもわからないようだった。誰もが無言であり、ティニアですら無言だった。いつ撃ち抜かれても可笑しくない状況で張り詰めていた。
道中にフェンスはあったが、何事もなく通過していたため余計に不気味だったのだ。
いつ殺されても可笑しくない、張り詰めた空気。重苦しい足取り。疲労から来る絶望感。
あれが国境なのか、誰も聞かなかった。そしてその集団の前に現れたのが、アドニスたち聖職者であった。
暖かいスープや布が提供され、誰も訪ねることなくここが永世中立国内であることを悟ったのだ。
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