11 / 257
第0輪「その夢は二度観る」
⓪-10 追憶は白銀へ染め②
しおりを挟む
ラーレは足で拳銃を男に向かって蹴り上げた。
そしてその反動のまま、ラーレは少年の額へ、仕込みナイフを放つ。男は簡単に拳銃を避け、ナイフを叩き落とした。やはりほぼ同時、否それ以上の速度で反撃を返してくる。
男は袖に仕込んでいたのか、別の拳銃をラーレの額に突き付けようとしている。ラーレはすでに壁際であり、後退は出来ない。
隻眼の男はお得意のカウンターから、間合いを一瞬で詰めてきた。
(やっぱりそうだ)
間合いを詰めたという事は、男は威嚇だけであり、拳銃でもってラーレを殺す気などない。
ラーレはわき腹を抑えていた手を、男へ向かって振りかざした。ラーレの血液が、拳銃越しに男の顔面にかかる。
男は隻眼。片目の役割は常人以上に注意深く冴え渡っており、それが仇となるだろう。一瞬ひるんだのを、ラーレは見逃さなかった。
ラーレは胸ポケットにしまっていた銃弾を手に、男の隻眼で隠れていない、左目目掛けて飛び掛かった。不可能だった間合いは、男がわざわざ詰めてきたのだ。
(殺れる)
少年は確かに、隻眼の男の背後にいたはずだった。男が間合いを詰めるまで、腕で押さえつけられてもいた。
「嘘……なんで………………!!」
だからこそ、少年が男の前に出ることなど、想定していなかったのだ。そんなことはあり得ない。
「あ……あぁ…………」
力なくラーレの腕が少年から離れようと、逃げようとしたが、少年はその手を優しく掴む。そのまま嗚咽だけを発し、ラーレは放心してしまった。
ラーレの手に持った銃弾は、長身男の瞳ではなく、少年の瞳を貫いていた。怯むことなく眼下に接近した少年はあどけなく、なんの殺気も感じなかった。酷く穏やかであり、微笑んでいるようにも見える。
「大丈夫。ボクはこんな事で死ぬことはない」
少年の顔をきちんと見つめたのはこの時だった。片方の瞳は、溢れ出た血液によって、見るも無残だ。そして、ラーレを見据える瞳はもまた、血液が乱流し、赤く血走る。ラーレは動くこともなく、震えることもなく、ただただ少年を見つめることしか出来なかった。
そしてその反動のまま、ラーレは少年の額へ、仕込みナイフを放つ。男は簡単に拳銃を避け、ナイフを叩き落とした。やはりほぼ同時、否それ以上の速度で反撃を返してくる。
男は袖に仕込んでいたのか、別の拳銃をラーレの額に突き付けようとしている。ラーレはすでに壁際であり、後退は出来ない。
隻眼の男はお得意のカウンターから、間合いを一瞬で詰めてきた。
(やっぱりそうだ)
間合いを詰めたという事は、男は威嚇だけであり、拳銃でもってラーレを殺す気などない。
ラーレはわき腹を抑えていた手を、男へ向かって振りかざした。ラーレの血液が、拳銃越しに男の顔面にかかる。
男は隻眼。片目の役割は常人以上に注意深く冴え渡っており、それが仇となるだろう。一瞬ひるんだのを、ラーレは見逃さなかった。
ラーレは胸ポケットにしまっていた銃弾を手に、男の隻眼で隠れていない、左目目掛けて飛び掛かった。不可能だった間合いは、男がわざわざ詰めてきたのだ。
(殺れる)
少年は確かに、隻眼の男の背後にいたはずだった。男が間合いを詰めるまで、腕で押さえつけられてもいた。
「嘘……なんで………………!!」
だからこそ、少年が男の前に出ることなど、想定していなかったのだ。そんなことはあり得ない。
「あ……あぁ…………」
力なくラーレの腕が少年から離れようと、逃げようとしたが、少年はその手を優しく掴む。そのまま嗚咽だけを発し、ラーレは放心してしまった。
ラーレの手に持った銃弾は、長身男の瞳ではなく、少年の瞳を貫いていた。怯むことなく眼下に接近した少年はあどけなく、なんの殺気も感じなかった。酷く穏やかであり、微笑んでいるようにも見える。
「大丈夫。ボクはこんな事で死ぬことはない」
少年の顔をきちんと見つめたのはこの時だった。片方の瞳は、溢れ出た血液によって、見るも無残だ。そして、ラーレを見据える瞳はもまた、血液が乱流し、赤く血走る。ラーレは動くこともなく、震えることもなく、ただただ少年を見つめることしか出来なかった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

【完結】暁の草原
Lesewolf
ファンタジー
かつて守護竜の愛した大陸、ルゼリアがある。
その北西に広がるセシュール国が南、大国ルゼリアとの国境の町で、とある男は昼を過ぎてから目を覚ました。
大戦後の復興に尽力する労働者と、懐かしい日々を語る。
彼らが仕事に戻った後で、宿の大旦那から奇妙な話を聞く。
面識もなく、名もわからない兄を探しているという、少年が店に現れたというのだ。
男は警戒しながらも、少年を探しに町へと向かった。
=====
別で投稿している「暁の荒野」と連動しています。「暁の荒野」の続編が「暁の草原」になります。
どちらから読んでいただいても、どちらかだけ読んでいただいても、問題ないように書く予定でおります。読むかどうかはお任せですので、おいて行かれているキャラクターの気持ちを知りたい方はどちらかだけ読んでもらえたらいいかなと思います。
面倒な方は「暁の荒野」からどうぞ!
※「暁の草原」、「暁の荒野」共に残酷描写がございます。ご注意ください。
=====
この物語はフィクションであり、実在の人物、国、団体等とは関係ありません。
=====
他、Nolaノベル様、アルファポリス様にて投稿しておりますが、執筆はNola(エディタツール)で行っております。
Nolaノベル様、カクヨム様、アルファポリス様の順番で投稿しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる