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ブライトはアンブレラに意味ありげな視線を送った後、私を睨みつける。
「レイス。お前が悪女であることは既に決定している。こんなにもアンブレラが傷つけられ苦しんでいるんだ……それがなによりの証拠だ。お前とは即刻婚約破棄をする。そして……」
ブライトはそこまで言うと、アンブレラの肩に手をやって抱き寄せる。
アンブレラは驚く様子もなく、彼に身を任せる。
やはり二人は初対面でも何でもないようだ。
「男爵令嬢アンブレラを新たな婚約者として迎え入れることをここに宣言する!」
周囲の貴族たちからざわめきが上がる。
それも当然だ。
私に雑な冤罪をかけただけでなく、関りがないはずの令嬢といきなり婚約すると言い始めたのだ。
私も驚きで目を見開いていた。
「レイス。お前はアンブレラを傷つけた罪として国外追放を言い渡す。もう僕達の目の前に現れるな。次に姿を見た時は打ち首にしてやる」
「そんな……しかし私は本当にアンブレラをいじめてなどいません!」
抵抗するように声を上げるも、ブライトに一蹴される。
「黙れ! 極悪非道の悪女の言うことなど誰が信じられるか! 潔く罪を償え!」
ブライトの言葉にアンブレラも同調するように声を上げる。
「そうよ! 私の苦しみをその身に味わいなさい!」
どうしたものだろうか。
公爵令息であるブライトは身勝手な発言をするものの、権力だけは持っているので、誰も彼を非難するようなことは言わない。
これ以上私も声を荒げれば被害は家にまで及ぶかもしれない。
嬉しそうにこちらを見ているアンブレラは、すっかり安心しきったようで、ブライトの腕に自分の腕を絡めている。
ブライトという後ろ盾がある以上、彼女への攻撃も得策ではないような気がする。
しかし何もしなければ私はこのまま国外追放に処されてしまう。
本当に罪を犯したならまだしも、冤罪で国外追放なんて、悔やんでも悔やみきれない。
「わ、私は……」
何か言わなくてはと思い口を開くも、言葉は続かない。
そんな私を見て、ブライトとアンブレラは高らかに笑い声を上げる。
悔しい……そんな気持ちが心に浮かぶも、何の打開策も思いつかない。
諦めて俯いたその時、ふいに後ろに人が歩いてくる気配を感じた。
「大丈夫だよ、レイス」
耳に心地よい声に振り向くと、そこにはこのパーティーの主催者であるオリジン第一王子が立っていた。
「え……オリジン王子!?」
彼は柔らかな笑顔で私を見つめると、次いでアンブレラとブライトの方へ目を移す。
「公爵家のブライトさん。あなたはここにいるレイスと婚約破棄するのですね?」
突然現れた王子に周囲は騒然となっていた。
しかし彼の言葉に、喧騒がピタリと止む。
質問をされたブライトは少し顔色を悪くしながら、ゆっくりと口を開く。
「え、ええ……もちろんです。レイスはアンブレラをいじめ傷つけました。そんな悪女とは婚約してなどいられません。今をもって婚約破棄とさせて頂きます」
「うん、なるほど……」
王子は笑顔を保ったままどこか嬉しそうに言うと、私にちらっと目を向けて、再びブライトに言葉を告げる。
「じゃあ僕がレイスのこともらってもいいかな?」
「え?」
目が点になったブライトよりも、私は驚いていることだろう。
殴られたような衝撃が全身に走って、まるで意識が失ったような感覚に陥る。
世界に色と音が戻ってきた時には、王子の素敵な笑みが私に向けられていた。
「レイス。僕の婚約者になってくれないかい?」
あぁ、そうか。
これはきっと夢なんだ。
そう思わなければ説明がつかないほど、私の心は幸福に満ち溢れていた。
「レイス。お前が悪女であることは既に決定している。こんなにもアンブレラが傷つけられ苦しんでいるんだ……それがなによりの証拠だ。お前とは即刻婚約破棄をする。そして……」
ブライトはそこまで言うと、アンブレラの肩に手をやって抱き寄せる。
アンブレラは驚く様子もなく、彼に身を任せる。
やはり二人は初対面でも何でもないようだ。
「男爵令嬢アンブレラを新たな婚約者として迎え入れることをここに宣言する!」
周囲の貴族たちからざわめきが上がる。
それも当然だ。
私に雑な冤罪をかけただけでなく、関りがないはずの令嬢といきなり婚約すると言い始めたのだ。
私も驚きで目を見開いていた。
「レイス。お前はアンブレラを傷つけた罪として国外追放を言い渡す。もう僕達の目の前に現れるな。次に姿を見た時は打ち首にしてやる」
「そんな……しかし私は本当にアンブレラをいじめてなどいません!」
抵抗するように声を上げるも、ブライトに一蹴される。
「黙れ! 極悪非道の悪女の言うことなど誰が信じられるか! 潔く罪を償え!」
ブライトの言葉にアンブレラも同調するように声を上げる。
「そうよ! 私の苦しみをその身に味わいなさい!」
どうしたものだろうか。
公爵令息であるブライトは身勝手な発言をするものの、権力だけは持っているので、誰も彼を非難するようなことは言わない。
これ以上私も声を荒げれば被害は家にまで及ぶかもしれない。
嬉しそうにこちらを見ているアンブレラは、すっかり安心しきったようで、ブライトの腕に自分の腕を絡めている。
ブライトという後ろ盾がある以上、彼女への攻撃も得策ではないような気がする。
しかし何もしなければ私はこのまま国外追放に処されてしまう。
本当に罪を犯したならまだしも、冤罪で国外追放なんて、悔やんでも悔やみきれない。
「わ、私は……」
何か言わなくてはと思い口を開くも、言葉は続かない。
そんな私を見て、ブライトとアンブレラは高らかに笑い声を上げる。
悔しい……そんな気持ちが心に浮かぶも、何の打開策も思いつかない。
諦めて俯いたその時、ふいに後ろに人が歩いてくる気配を感じた。
「大丈夫だよ、レイス」
耳に心地よい声に振り向くと、そこにはこのパーティーの主催者であるオリジン第一王子が立っていた。
「え……オリジン王子!?」
彼は柔らかな笑顔で私を見つめると、次いでアンブレラとブライトの方へ目を移す。
「公爵家のブライトさん。あなたはここにいるレイスと婚約破棄するのですね?」
突然現れた王子に周囲は騒然となっていた。
しかし彼の言葉に、喧騒がピタリと止む。
質問をされたブライトは少し顔色を悪くしながら、ゆっくりと口を開く。
「え、ええ……もちろんです。レイスはアンブレラをいじめ傷つけました。そんな悪女とは婚約してなどいられません。今をもって婚約破棄とさせて頂きます」
「うん、なるほど……」
王子は笑顔を保ったままどこか嬉しそうに言うと、私にちらっと目を向けて、再びブライトに言葉を告げる。
「じゃあ僕がレイスのこともらってもいいかな?」
「え?」
目が点になったブライトよりも、私は驚いていることだろう。
殴られたような衝撃が全身に走って、まるで意識が失ったような感覚に陥る。
世界に色と音が戻ってきた時には、王子の素敵な笑みが私に向けられていた。
「レイス。僕の婚約者になってくれないかい?」
あぁ、そうか。
これはきっと夢なんだ。
そう思わなければ説明がつかないほど、私の心は幸福に満ち溢れていた。
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